「産学間の技術移転が、日本ではあまりうまくいっていないとの見解をよく目にするが、実績のデータをみると実際は、産学連携先進国の米国を約20年遅れで着実に追っていると言える」。こう強調したのは、東京大学TLO(東京・文京)代表取締役社長の山本貴史氏(写真)。2018年9月1日、2日にお茶の水女子大学(東京・文京)で開かれた「UNITTアニュアル・コンファレンス2018」のパネル討論前の1コマである。

写真 東京大学TLO代表取締役社長の山本貴史氏
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TLO法施行20周年の節目に開催

 同コンファレンスは一般社団法人大学技術移転協議会(UNITT)が主催。日本の大学や公的研究機関が産み出す研究成果を、社会で活用する技術移転の現状や課題を議論した。ことしは折しも、「大学における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律(TLO法)」が1998年8月に施行され、大学などの成果を民間に移転する仲介を務める技術移転機関(TLO=Technology Licensing Organization)が誕生して20周年にあたる。そこでオープニングセッションとして、パネル討論「TLO法施行20周年 産学連携のこれまでとこれから」を開催した。

 このパネル討論のモデレーターを務めたのが山本氏である。パネルを始めるにあたり山本氏は、「大学技術移転サーベイ」(大学技術移転協議会)がまとめた実績データを元に、国内の産学官技術移転のこれまでを概観する講演を行った。同サーベイは2006年から毎年、大学やTLOなどにアンケート調査を実施して集計したデータである。

注)図表のグラフやデータは大学技術移転協議会が発行した「大学技術移転サーベイ」を基に山本氏が整理・加工して作成した。
図1 2005年度から2016年度までの大学などのロイヤリティー収入などの推移
ランニング収入が着実に伸びているのは、産学連携・技術移転事業の安定につながると山本氏は指摘した
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 山本氏はまず、2005年度から16年度までの大学などのロイヤリティー収入(特許などの技術移転収入)の推移を示し、「ランニング収入が着実に伸びている実績が重要」(山本氏)と解説した(図1)。ライセンス供与などによって得られるランニング収入は長期間にわたる継続的な収入源となり、大学やTLOなどの産学連携・技術移転組織に専任の担当者を常時雇⽤できるなど、 同事業の態勢を維持しやすくなるからだ。「その他のランニング収入」に分類される特許などの技術移転時の「一時金」などはあくまで臨時収入であり、これだけでは安定した運営につながりにくい。

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