鉄道総合技術研究所は機械学習の考え方を利用して異常な振動を検出する「状態監視システム」を開発、営業列車での実験で故障の予兆を50日前から捉えていたと明らかにした〔図1、参考文献 1)〕。広い周波数の振動を捉えて、いつもと同じか違っているかを検出できる。異常を検出したら他の方法で詳細に分析するなどして不具合部位を特定する、といった運用が可能。鉄道車両以外への応用も容易と考えられる。

図1 鉄道総合技術研究所が開発した車載状態監視装置
図1 鉄道総合技術研究所が開発した車載状態監視装置
右が車載型の監視装置。左が移動可能な振動記録装置、中央がタブレットで振動を記録するシステム。
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営業車両の不具合を記録

 機器に生じる振動の監視は、単に振動の大きさだけを見るのでは機器のさまざまな状態を区別しにくいが、FFT(高速フーリエ変換)などで周波数成分を詳細に分析し続けるのは大変で、記録するべき振動データの量もぼう大になる。一方で、不具合のメカニズムや内容が「ある部位の軸受の損傷」などとあらかじめ分かっている場合には特定の周波数の振動だけを見ていればよいが、どんな不具合が生じるか分からない場合は、広い範囲の周波数を監視する必要がある。

 そこで鉄道総研の研究グループはオクターブバンド分析により、ある程度幅の広い周波数帯の振動状況を少ないデータ量で表現し、正常時のデータと比較することで異常を検出するシステムを開発した。このシステムは、加速度センサーからの信号をオクターブバンド分析するまでを車載機器が実行し、その結果を記憶媒体または携帯電話回線などで送り、パソコンなどによる診断システムで正常か異常かを判定する。判定には機械学習を用い、正常時に蓄積した振動データと現在の振動状況とのかい離を見る。かい離が大きい場合、何らかの不具合が生じている可能性があるとして車両検修員などに知らせる。

 同研究所は鉄道事業者の協力を得て、2017年2月から11月まで実験としてディーゼルカー(気動車)にシステムの機器を搭載してデータを取得し、分析した。ディーゼルカーを選んだのは、ローカル線で1両編成で走ることが多く、都市部の長編成の電車などが複数の動力車を有するのに比べて故障時に走行不能になりやすいなど影響が大きいと考えられるため。この車両は実験期間中に、定速回転装置(CSU)の不具合によりラジエーターファンを駆動できなくなるという故障を発生した*1

*1 定速回転装置 エンジンの回転を入力とするが、スリッピングクラッチを応用する。入力の回転変動にかかわらず出力の回転数を一定に維持する装置。車内電源用の発電機を駆動するのにも使う。

 取得したデータを分析したところ、CSUに取り付けたセンサーからのデータに約50日前から異常判定が増え始め、20日前からは特に異常率の高い状態が続いていた。不具合の原因は、CSUのエンジン側回転軸のスペーサーが摩耗して軸にガタつきを生じたことだった。

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