厚生労働省が主導する「医療版マイナンバー」が本格始動する。健康保険証などに記載している被保険者番号に2桁の番号を追加し、個人を識別できるようにしていく。法改正などを経て2020年4月以降に健康保険組合などが保険証を順次新たな被保険者番号に切り替える方針だ。

 厚労省は新たな被保険者番号により、異なる医療機関が個人の健康診断や診療、投薬情報などを共有したり、健康や医療、介護分野で別々に管理している個人データを連結・分析して医療サービスなどの質の向上に役立てたりできるとする。だがマイナンバーと異なり用途を限定しておらず、「被保険者は自身の番号を厳格に管理する必要がある」と識者は警鐘を鳴らす。

図 個人単位の番号付きの保険証様式案
(出所:厚生労働省)
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 現在の被保険者番号は基本的に世帯単位で振られており、医療機関は家族で同じ番号を保険資格の確認などに使っている。被保険者の資格管理は健康保険組合などが組織ごとに行っている。転職や転居などで加入している保険が変わると新たな被保険者番号が振られるため、同一人物かどうかを確認するのが難しかった。

 厚労省は2018年3月に設置した有識者検討会で、医療機関などが個人の医療情報の共有や収集、連結を効率的に進める識別子の導入に向けて議論した。その結論が被保険者番号の個人単位化、つまり被保険者番号を使って個人を識別できるようにすることだった。

 さらに、同一人物に複数割り当てられた被保険者番号の履歴を管理する履歴管理提供主体や、医療機関などが被保険者番号履歴の提供を受けられる仕組みを整備する必要があるとしている。

被保険者番号は用途に制限がない

 厚労省が2018年8月13日に公表した有識者検討会の報告書は、被保険者番号そのものと、被保険者番号にひも付ける医療情報などの履歴について、それぞれ必要な規律を説明している。

 被保険者番号にひも付ける医療情報の履歴の提供先は情報セキュリティ対策が整った医療機関などに限る。そのために新たな法律を設ける方針だ。全国がん登録データベースなどの公的データベース間で同一人物の医療情報などを連結する場合も、容易に書き取りができない連結符号を使うといった規律を設ける。

 問題は法律で用途を限定しているマイナンバーとは違い、被保険者番号そのものに用途の制限がないことだ。保険証は運転免許証などに準じた本人確認のための書類の1つとして使われてきた。被保険者番号を従業員番号として使っている企業もある。

 企業関係者からは「新たな被保険者番号と信用情報をひも付けたり、グループ内でユニークな顧客番号としてマーケティングに使えたりするのではないか」という指摘が出ている。マイナンバーに比べて永続性や網羅する対象者は限られるものの、頻繁に変わるわけではないので便利に使える識別子になり得るわけだ。厚労省は新たな被保険者番号の取り扱いについて法律よりも下位のガイドラインを定め、同番号の乱用に歯止めをかける方針だ。

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