炭素系の負極材料と層状酸化物系の正極材料を組み合わせ、有機電解液を注入したリチウムイオン電池(LIB)――。電気自動車(EV)用の電池で現在主流になっているのは、こうしたものだ。一方、三洋化成工業と慶應義塾大学特任教授の堀江英明氏らが共同で開発しているのが、そうした既存のLIBと一線を画するLIB「全樹脂電池」だ。最大の違いは、その構造と製造方法。既存のLIBに対してエネルギー密度や生産性を大幅に高められる可能性を秘める。

 全樹脂電池の最大の特徴は、正極または負極の活物質の粒子を、電解液を吸わせたゲル状の高分子膜で覆う点(図1)。そして、それらのいずれかを粒子状の導電助剤や導電性繊維と混ぜて合材として、セパレーターおよびシール材製の枠で仕切られた空間に充填し、正極と負極の層(電極層)を形成する点だ(図2)。電極層のセパレーターとは反対側には、導電性樹脂の集電体を配する。

図1 全樹脂電池の基本構造
図1 全樹脂電池の基本構造
正極(負極)の活物質の粒子を、電解液を吸わせたゲル状の高分子膜で覆い、それらに粒子状の導電助剤と導電性繊維を混ぜて正極(負極)の合材とする。さらに、正極と負極の合材をセパレーターを挟んで重ね合わせ、正負極の表面それぞれに導電性樹脂製の集電体を配したものが同電池。WO2015/093411を基に編集部が作成。
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図2 全樹脂電池の製造方法の一例
図2 全樹脂電池の製造方法の一例
ロール状の集電体シート上に、シール材料を溶融して滴下し下層部の枠体を形成。同枠体内に正極の合材を充填し、その上にセパレーターを配置する。さらに、上層部の枠体を形成し、負極の合材を充填し、その上に集電体を被せる。最後に枠体を切断して単セルを得る。特開2017-41310を基に編集部が作成。
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 1枚の集電体の表裏に1対の電極を形成するバイポーラ構造や、異なるセルを集電体の面接触によって接続する構造を採れるため、集電体の枚数やセル間を接続する配線材(バスバー)を減らすことなどが可能。電池のパッケージング効率を上げて、エネルギー密度の向上を狙える。

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