社内のITシステムと聞くと、普通は業務に直結する基幹システムやメールをはじめとする情報系システムを思い浮かべるのではないだろうか。最近は、こうしたシステムを自社で持つのではなく、クラウド上に構築したり、クラウドのサービスを活用して実現したりする例が増えている。

 こうした風潮に逆行するように、自社でスーパーコンピュータを所有し、人工知能(機械学習や深層学習)の研究基盤を社内システムとして提供している企業がある。Preferred Networks(PFN)だ。同社は、交通システムや産業用ロボット、バイオヘルスケアといった分野に向けて、人工知能を利用したソリューションを提供している。人工知能の研究基盤を自前で持つことで、こうしたソリューションの研究開発力を高めている。

 ソフトウエアエンジニアとしてPFNの研究基盤を開発・運用している大村伸吾氏は、2018年7月29日に開かれたインフラ技術者向けイベント「July Tech Festa 2018」で、「Preferred Networksの機械学習クラスタを支える技術」と題して同社の取り組みを紹介した。

PFNで機械学習/深層学習の研究基盤を開発・運用する大村伸吾氏
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競争力の源泉である計算資源を自社内に持つ

 同社は、社内に機械学習の基盤を用意するため、「MN-1」というプライベートスーパーコンピュータ(GPUクラスター)を所有している。内部のデータ通信に高速なインタフェースであるInfiniBandを利用し、1000個以上のGPUを利用できるシステムだ。

 また同社は、Pythonで書かれたオープンソースの深層学習向けフレームワーク「Chainer」を開発している。分散システムでChainerを使った学習を行う「ChainerMN」という追加機能もある。MN-1でChainerMNを利用することで、効率的に学習を行える。

 PFNがプライベートスーパーコンピュータを自社で持つことにこだわるのにはいくつかの理由があるという。

 まず、機械学習においては計算力が競争力の源泉だということだ。例えば、ある主要な機械学習の学会の論文締め切りの直前に、大手クラウドサービスが提供するGPU資源が枯渇することがあったという。一時的に急増した需要に供給が追いつかなかったのだ。自社で大量の計算資源を所有すれば、他社が成し遂げられない成果を上げられる。

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