群馬県太田市。SUBARU(スバル)が主力工場を構えるこの街に、タイヤ世界大手のフランス・ミシュラン(Michelin)もまた、日本での研究開発拠点を置いている。騒音や冬用タイヤの研究開発をリードし、世界に技術を発信する重要拠点だ。日本人として初めて同拠点のトップに就任した副社長の東中一之氏は、「壊れないタイヤ」の実現に意気込んでいた。

(聞き手は窪野 薫=日経 xTECH)

ひがしなか・かづゆき。1969年生まれ。1996年ミシュランリサーチアジア入社。材料開発部マネージャー、材料研究部部長を経て、2016年から日本ミシュランタイヤ研究開発本部本部長。2018年から現職。
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タイヤの需要に変化は。

 これまで燃費の向上を売りに訴求してきた。しかし世界最大の自動車市場である中国では、未だに低燃費タイヤの売れ行きが伸びない。現地の物流会社の部長からは「燃費よりもダウンタイム(故障時間)の低減が重要だ」という声が上がっている。特にトラックやバスなどの商用車は稼働率が全て。車両の故障が物流会社の事業活動への打撃になるからだ。

 稼働率の問題は日本でも変わらない。例えば高速道路上でトラックが故障して立ち往生したとする。首都高速道路のような幅が狭い道路の場合、他の車両はトラックを避けて走り抜けることもできない。車両の流れは完全にストップする。

 道路に車両が溢れて渋滞が発生すれば、修理のための緊急車両も近づけないだろう。トラックは会社名やブランド名を掲げていることが多い。このような故障は、稼働率の低下に加え、企業イメージに大きなマイナスの影響を与える。Michelinとしては「壊れないタイヤ」を実現したいという考えがあり、タイヤの損傷が原因の車両停車をゼロにすることを目指す。

 壊れないタイヤを実現する目的は、車両の稼働率を高めることだけではない。タイヤにとって最重要である安全性の向上にも貢献できる。例えば、乗用車で近年主流のFF(前部エンジン・前輪駆動)車では、前輪周辺の質量が大きくなりやすい。仮に、走行中に前輪のタイヤがバースト(破裂)したとすると、車両前部の車高が急激に落ちる。運転者の思わぬ方向に車両が動き、安全に停車できるとは限らない。大きな事故にも繋がりやすい。安全性は普遍的なものだ。タイヤの性能を向上するために安全性を犠牲にする発想は無い。

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