競技レベルのアスリートのみならず、週末のみプレーするスポーツ愛好家にとってもスキルの向上は大きな目標である。近年、ランニングなどの屋外スポーツではGPS(全地球測位システム)などを使ったトラッキングシステムを活用して、走行距離や速度などをデータ化するサービスが一般レベルにも広まってきている。

 一方で、GPS信号が届かない屋内の競技のトラッキングは、相対的に遅れている。もちろん、プロなどトップレベルでは数多くのカメラを会場に設置することによる映像解析システムなどが導入されていることもあるが、そのコストは一般に「数千万円規模」とも言われ、場合によっては体育館の改造を伴うケースもある。

 こうした屋内スポーツの課題解決で、アシックスとNTTドコモがタッグを組んだ。両社はバスケットボールやバレーボールなどで、プレーヤーの移動距離や最高速度、消費カロリーなどその日の運動成果を記録したり、パフォーマンスの分析や戦略の構築を可能にする「屋内型運動データ測位システム」を開発した。

3月6日に開催した報道陣向け説明会でのデモ。アシックスのバスケットボールチームのメンバー6人が、右足の靴ひも部分にUWBのタグを取り付け、3対3に分かれて試合をしてデータを取得した
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 大規模なアリーナのみならず、市民・学校体育館、屋内テニスコートなど一般のスポーツ愛好家が利用する施設に設置し、手軽に運動データの記録と分析ができるようにすることを目指す。両社は2018年3月6~10日まで、神戸市の協力のもと、神戸市立西体育館で実証実験を行った。対象期間中に利用予約をしている複数のチーム・団体に協力を依頼し、システムを体験してもらった。

 実験に協力した神戸市は、「スポーツを通じた市民の健康増進や施設の魅力向上が狙い。さらに実証の場を提供することで、ICT(情報通信技術)の実験をしやすい街というイメージを定着させて、ICT企業を誘致したい」(企画調整局創造都市推進部ICT創造・事業推進担当係長の長井伸晃氏)と語る。

UWBの無線通信を利用

 「スポーツ界でも屋内測位に対するニーズは以前から強かった。ようやくハードウエアの技術が追いつき、(センサーを)人に搭載できるほど小型になってコストも安くなった」。今回の開発を主導したアシックス スポーツ工学研究所 IoT担当マネジャー 坂本賢志氏は、きっかけをこう語る。これまで、チームのアナリスト(分析官)らは、試合や練習の映像から、手動で選手やボールの動きなどを紙に記録していたりした、という。

 開発したシステムは、体育館内に設置した測位センサーと超広帯域無線通信「UWB(Ultra Wide Band)」のタグを用いる。測位センサーは弁当箱大で、コートの周囲上方に4台設置する。固定式ではないため、合宿などに持っていくことも可能という。今回は4台のセンサーで測位しているが、最低2台でも測定できる。

コートの周囲上方に設置する測位センサー。今回は4台設置した。ユビセンス製
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