ブロックチェーンを使い、決済のビジネス構造を変革する――。野心的な構想を三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が明らかにした。

 MUFGと米アカマイ・テクノロジーズ(Akamai Technologies)は2018年5月21日、「決済処理速度2秒以下、世界最速の取引処理性能毎秒100万件超」を実現するブロックチェーン技術を開発したと発表した。2019年度以降、IoT(インターネット・オブ・シングズ)時代に求められる取引速度と処理容量を持つ決済基盤としてサービス提供を目指す。

 2社が試作したシステムの名称は「新決済プラットフォーム(仮称)」。クレジットカードや電子マネー、ICカード決済からQRコード決済まで様々な決済方式に対応できるという。

 仮想通貨ビットコイン(Bitcoin)を参考に、決済データを処理する独自のブロックチェーンソフトを開発。プロトタイプを構築して各種実証実験(PoC)をした結果、ブロックチェーンの知見がある技術会社から、毎秒100万件の決済処理を実現する上で障害になる項目はない、との評価を受けた。

 毎秒100万件という処理性能は、大手決済ネットワークが提供する毎秒数万件を上回る。将来はインフラの増強などで毎秒1000万件規模への拡張も可能という。

 MUFGはこの基盤を、企業が新たな決済サービスを最小限の投資で展開するためのインフラとして、外部企業に開放する考え。1決済当たりの手数料を安価に設定し、1回数円~数十円ほどの少額決済にも対応できるようにする。現在実証中の「MUFGコイン」など自行が開発する決済サービスも、同基盤上で展開できるという。

IoT時代に備え、4年前から構想

 「4年ほど前から、大量かつ安価に処理できる決済ネットワークについて、ブロックチェーンに限定せず議論し、構想を練っていた」。こう語るのがプロジェクトの仕掛け人の1人、三菱UFJニコスの鳴川竜介常務執行役員兼チーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)だ。アカマイ日本法人の新村信 最高技術責任者(CTO)、三菱UFJ銀行 デジタル企画部の杉本理記調査役、三菱UFJニコス 経営企画本部 デジタル企画部 デジタル企画グループの富井浩文次長と共に新たな決済システムを設計したという。

左から三菱UFJニコス 経営企画本部 デジタル企画部 デジタル企画グループの富井浩文次長、アカマイ・テクノロジーズ日本法人の新村信 最高技術責任者、三菱UFJニコスの鳴川竜介常務執行役員チーフ・テクノロジー・オフィサー、三菱UFJ銀行 デジタル企画部の杉本理記調査役
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 鳴川CTOはクレジットカードや各種電子マネーに対応したクラウド型マルチ決済システム「J-Mups」(現在は日本カードネットワークとJR東日本メカトロニクスが運営)の開発を指揮したことで知られる。

 2012年にサービスが始まったJ-Mupsは、アナログ回線やISDN回線が主流だった決済端末の通信をインターネットに置き換え、決済にかかる時間をこれまでの10秒から最長2秒に短縮。さらに認証などの機能をサーバーに集約し、決済端末をシンクライアント化することで、端末の導入コストを数分の1に引き下げた。

 そしてアカマイは、J-Mupsにおいて決済端末とセンター間をつなぐ高速ネットワークを提供。「2秒以内の決済」を実現するうえで重要な役割を果たした。

 その後、鳴川CTOらが新たに構想したのが、IoT時代の大量・少額決済に対応した次世代の決済システムだった。

 今後、IoT家電やシェアリングサービスの普及に伴い、時間単位課金やマイクロペイメント(少額支払い)などの決済手段が普及すれば、今の10倍、100倍の決済処理が求められる可能性がある。

 現在の決済ネットワークのシステムやビジネスモデルは、大量・少額の決済には適さない。1件当たり8~9円といった定額のコストがかかり、少額決済の場合は相対的にコスト高となるためだ。2~4%ほどのカード決済手数料ではコストをまかなえず、現在はカード会社が赤字を補填している状態という。

 「まず既存のデータベース(DB)技術で実現できないかを検討」(鳴川CTO)し、SI事業者に調査させたところ「毎秒30万件の処理が限界」との回答だった。

 そこで、仮想通貨の技術基盤であるブロックチェーンに目を付けた。「取引(トランザクション)の整合性をブロック単位で後からまとめて検証するブロックチェーンは、取引ごとにDBをロックすることで整合性を保つ既存のDBソフトよりも、処理性能の面で有利になると見込んだ」(アカマイの新村CTO)。

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