ソフトバンクと物質・材料研究機構(NIMS)は、Li空気電池の実用化を目指す「NIMS-SoftBank先端技術開発センター」の設置に関する覚書を締結した。契約期間は2年間で、ソフトバンクが10億円超を出資する。これまでのNIMSにおける開発の数倍となる約50名規模の研究開発体制を整え、Li空気電池の実用化を加速していくとした。「50名のうち、約半数の人材は我々から(同センターに)送り込む」(ソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員 兼 CTOの宮川潤一氏)。

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覚書を披露するソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員 兼 CTOの宮川潤一氏(左)と 物質・材料研究機構 理事長の橋本和仁氏(右)

 Li空気電池は、正極の活物質として空気中の酸素、負極としてLi系材料を用いる2次電池。Li酸素電池とも呼ぶ。放電時は、Liの酸化が進んで、酸化リチウム(Li2O2)が生成する。これは、Liを燃焼させた灰ともいえる。充電時は、このLi2O2を還元(脱酸素)して、Liに戻す。これらの反応で得られる重量エネルギー密度は、理論的には1万Wh/kg超とされ、現行のLiイオン2次電池(LIB)のやはり理論値の約30倍となる。

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NIMSが開発したLi空気電池(下)でLEDを発光させるデモ

 ただし、実際には電解質やセパレーター、電極、パッケージの体積や重量があるために、現実的な重量エネルギー密度は理論値の数分の1になる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、現行のLIBの8~10倍となる約2000Wh/kgが実現可能な値とみる。

 Li空気電池には、高いエネルギー密度の他にも大きなメリットがある。現行のLIBの正極材料に使われているコバルト(Co)を用いない点だ。Coはこの3年ほどで価格が数倍に高騰しており、大幅な増産のメドもたっていない。このため、EVの本格普及期をにらんで、鉱山や採掘権の争奪戦が始まっている。これには、特に中国メーカーが大きく先んじている。Li空気電池が実用化できれば、この劣勢を解消できる。

 Li空気電池にはこうした大きな潜在力があるために、NIMSのほか、トヨタ自動車、韓国サムスン電子(Samsung Electronics)などさまざまなメーカーや研究機関が研究開発を進めている。

エネルギー密度5倍で世界が変わる

 ソフトバンクの宮川氏は今回のNIMsへの出資の動機として、「これまでIoT(Internet of Things)関連でいろいろな企画を考えてきたが、実現しようとするといつも電池問題にひっかかる。10年持たせたいIoT端末は現状では3年が限界。眼鏡型IoT端末は、電池を1日持たせるのが難しい。ドローンやPepperのようなロボットでも、もう少し電池の能力が上がれば投資効率が大きく向上する」ことを挙げた。

 Li空気電池に注目した理由は、「エネルギー密度が(現行のLIBの)5倍になれば、世の中ががらっと変わると考えているが、それを実現するには今の技術では難しい。論文を当たっている中で、Li空気電池に行き着いた。特に、NIMSの研究開発はいいところにきていると思う」(宮川氏)とした。

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NIMSが開発したスタック型Li空気電池のモックアップ
10層のスタックで厚みは約8mm

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