なぜソフトウエア開発者は恋愛で苦労しがちなのか――この問題にアプローチするために、ステレオタイプ的なソフトウエア開発者像を振り返ってみよう。もちろん、あらゆるステレオタイプというのはそういうものだが、オタクっぽく社交下手なソフトウエア開発者というステレオタイプは、あなたには当てはまらないかもしれない。しかし、ぴったり当てはまる場合、あるいは少しでも当てはまる場合は、ここで私が言おうとしていることの一部は、たぶんあなたにも無関係ではないだろう。

図1●「Forever Alone」(ずっとぼっち)

 インターネットには、「Forever Alone」(ずっとぼっち)という有名なミーム(流行りネタ)がある。基本的に、永遠に恋人を見つけられず孤独だという意味である。私の経験では、多くのソフトウエア開発者、それも若い人々がこのミームに共感しているようだ。

 しかし、このミームと感覚に一体化してしまうと、問題を悪化させることになる。どのようにして人が人を愛し、どのようにして人間関係が機能するかは奇妙なものだ。それは、実際には猫とねずみのゲームである。ある一時点では、片方が追いかけ、もう片方が追いかけられている。時々、攻守ところを変えていれば、問題はない。しかし、片方がいつも追いかけていると、もう片方はどんどん離れていってしまうものだ。

 こうした深追いはよくあることで、多くの人々が直面している。実際に深追いし過ぎると、自暴自棄になっている感じが漂ってくる。自暴自棄になると反感を買い、自尊心が傷つくことになりがちで、そうするとさらに自暴自棄になる。これは多くの人々がはまってしまう悪循環で、彼らはどうすればそこから抜け出せるかわからなくなってしまう。

 この状況にはまってしまった多くの人々は、思いを包み隠さず話す傾向がある。彼らは、ほかの人々に向かって自分が感じている苦痛と孤独のオーラを発散させ始める。「彼らが私の苦痛を感じ、自分たちがいかに私を傷つけているかを知れば、彼らも理解してくれるだろう」 。自分がいかに悲しく孤独かを世間に知らせて、なりふりかまわず注意と同情を求めるこのようなポストをFacebookで見たことがあるだろう。

 しかし、あなたもご存知のように、このような行動は逆効果だ。自分は弱くて傷つきやすいと主張すればするほど、人々はあなたを避けるようになる。遠慮なしに言えば、誰もこのような性格を魅力的だとは思わないのである。

ゲームの性質を理解する

 恋愛はゲームである。嘘ではない。このシステムからどんなに抜け出そうとしても、抜け出すことはできない。多くの人々が、「自分はこんなゲームをしたくない。自分らしさを失わず、自分が感じることに正直でいたい」と思う。こういう気持ちになるのはわかる。しかしながら、あなたがこの原稿を読んでいる以上、私としては、それがあなたにどういう効果をもたらすのかと尋ねざるを得ない。

 悪く思わないでいただきたい。嫌らしくなれとか不誠実になれと言っているわけではない。しかし、異性を惹きつけようと思うなら、裏がなく直接的でありすぎるのもよくない。何が言いたいかというと、あなたは文字通りゲームをしているのだということを認識して、戦略というものを少し考える必要があるということだ。

 たとえば、(私は男の視点しか知らないのでその例を使うが)何週間も前から目をつけていた魅力的な女性につかつかと近づいていって、「あなたが好きです。初めて見たときから、ずっと好きです」 と言ったとする。恋愛対象にありったけの気持ちを注ぎ込んでいるように見えるかもしれないが、このような行動過程では、拒絶的な反応を受ける可能性が高いだろう。猫とねずみのゲームでは、これはあまり戦略的だとは言えない。

 別に心理学者でなくても、私たちは一般に、「自分は持てない上に他人もいいなと思うもの」をほしがるということはわかる。逆に、あなたが手に入りやすいものほど、あなたはほしいと思わない。小さい頃、いっしょに遊ぶ相手を確保しようとしてほかの子と追いかけっこになったことはないだろうか。人生は大きなプレイグラウンドだ。誰かに逃げてもらいたければ、追いかけることだ。

 しかし、じっと座って何もせず、好きな相手がこちらにやってきてくれるのを待つのもいい戦略とは言えない。とても長い間、待つことになるだろう。正解は、行動の端々から自信に満ちたオーラを発散し、話しかけやすいけれども威厳があるという感じで人に近づいていくことだ。「私は自分に満足しているし、あなたがどうしても必要というわけではないけど、あなたは面白そうだと思うので、もうちょっとあなたのことをよく知りたい」(もちろん、私ならこの通りに言ったりはしないが)。

 ポイントは、こういうニュアンスを実際に伝えることだ。あなたは、「自分が幸せになるために他人は必要ない」と本当に信じるために、十分に自信を持っていなければならない。また、あなたが近くにいることによって、その人の人生がよくなると本当に思っていなければならない。あなたは自分自身を大切にしているので、自分が望まれているところにしか現れず、自分を求める人としか時間を共有するつもりはないということは伝えなければならない。

 だからといって成功が保証されているわけではない。成功の保証などない。しかし、人間関係の大半を支配しているらしい追いかけっこの心理学を意識することができれば、本当に愛する人を見つけられる可能性はぐっと上がるだろう。そして、これは恋愛だけの問題ではない。あらゆる種類の人間関係に当てはまる。

出典:「SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル」(日経BP)の一部を抜粋・編集
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。