同じプロジェクトに関わっている仲間同士、多少言葉が足りなくても雰囲気で意味が分かる――。確かにそうした場合も少なくないでしょう。しかし、雰囲気に頼ったコミュニケーションは危険です。

 今回は、若手の文章指導に悩むリーダーからの相談を取り上げます。回答するのは、SEをはじめ技術の現場で働く人を対象に文章作成の指導をしている豊田倫子氏です。

相談:「何となく意味は伝わっている」と言う若手にかけるべき言葉は?
 文章の品質について指導していたら、若手から「何となく意味は伝わっているので、今まで通りでいいのではないですか」と言われました。文章を書くのは好きで、これまで自分の感覚で書いてきたそうですが、それで問題が起こらなかったというのです。
 今まではそうだったかもしれませんが、今後顧客とのやり取りが増える中、トラブルを生まないためにも気をつけてもらいたいと思っています。しかしこのように感覚的に文章を書いている人に強く言うのは、ハラスメントにならないかとためらっています。

 実務文章は、読者を楽しませる「文芸文章」とは異なります。仕事における文章は、情報伝達のための文字コミュニケーションです。

 良い実務文章とは、情報が早く正確に伝わる文章です。小説のように相手の心情を揺さぶったり、表現に技巧を凝らしたりする必要はありません。

 ビジネスは、信頼とルールに基づいて進みます。特にビジネス文書にはルールがあります。そのルールに従って情報発信すべきであることを、若手の方に伝えてあげてください。その際には、ルールを具体的に示しましょう。

 指導は、普段のメールのやり取りの中でもできます。5W2H(When、Where、Who、What、How、Why、How much)を意識する、箇条書きを活用するなどこまめにアドバイスするとよいでしょう。良い実務文章を書ける力が付くまでには半年くらいかかるかもしれませんが、根気強く続けましょう。

 人は変化を嫌います。大きく変えようとするのではなく、少しずつ指導していきましょう。

豊田 倫子
コンピュータハウス ザ・ミクロ東京
豊田 倫子 ヘルプデスクや検証技術者などを経て、約20年前から教育サービスに携わる。新⼊社員研修やリーダー研修、マネジャー研修などの企画コンサルティングや教材開発、研修講師、研修運営などを担当する。⼈材育成研修の受講⽣は延べ7万⼈。これまでに約5000⼈の⽂章を指導してきた。⽇経 xTECH ラーニングの⼈気セミナー「伝わる⽂章の査読・指導スキル養成講座」の講師を務める。