問題の現場

住宅地に近接した下水処理場の建設工事。住民と発注者との事前の取り決めで、工事現場のゲートの開門は午前8時以降と制限されていた。しかし、それを守るには、短時間で土砂を搬出するために車両台数を1.5倍に増やす必要があり、逆に渋滞や騒音が増えてしまうことが分かった。

戸田建設首都圏土木支店 川崎市等々力水処理C35作業所長 荒井 一範

 私が現在、現場代理人を務める川崎市の等々力水処理センターの工事では、周辺環境の保全が最重要課題だった。この施設では過去40年にわたって拡充などの工事が絶え間なく続いていたこともあり、騒音や振動などへの配慮が強く求められた。

 当社が2016年2月から手掛けている今回の工事では、80m四方、深さ20mの地下に処理施設を建設する。西側が住宅地に近接しているので、夏は多摩川からの東風が現場の粉じんを運ぶことが懸念された。土留め工事などで起こり得る騒音や振動も住民に不安を与えていた(写真1)。

写真1■工事区域の全景。道路を隔てた西側に住宅地が広がる。粉じん対策のため、東側の工事車両入り口から駐車スペースまでをアスファルト舗装した(写真:戸田建設)
[画像のクリックで拡大表示]

 こうした不安に対処するため、この施設の工事では以前から住民と発注者との間に「工事車両の出入りは午前8時から。午後6時にはゲートを閉門する」という取り決めがあった。準備などを考慮すると、毎日の工事開始は午前9時からとなる。

 着工前、この条件について協力会社と打ち合わせたところ、土砂を搬出する車両の運行に大きな影響が及ぶことが判明した。運搬車両のスケジュールと処分場の昼休みがうまく合わず、無駄な待機時間が発生して1時間の遅れ以上の影響が出てしまう。それを補うには、当初に予定していた車両数の1.5倍の台数が必要になることが分かった。

 こうした難しい状況の打開のため、私はまず近隣住民にヒアリングをした。これまでの工事でどのようなことに悩まされたのか具体的に話を聞くことで、不安軽減の糸口をつかもうとしたのだ。対策に納得してもらえれば、工事開始の条件緩和につなげられるかもしれないと考えた。

 実際に話を聞くと、近隣住民の懸念は粉じんと騒音に集約されることが分かった。

ここからは有料会員の登録が必要です。