「課題解決能力」を問うIIIの論文は、2015年度も13年度や14年度と同様に二つの問題から1問を選択し、600字詰め用紙3枚以内に2時間で記述する形でした。

 出題内容は、日本技術士会の「平成27年度技術士第二次試験の内容について」と題した資料にも記されているように、「最新の状況」や選択科目に共通する「普遍的な問題」を対象としています。ただし、普遍的な問題であっても昨今の社会資本整備の実情を踏まえた出題が増える傾向にあります。

 解決策を提示した後に課題や留意点、デメリットといった「残存リスク」を記述するよう求める設問も定着してきたようです。15年度も多くの科目が、小問の最後で尋ねています。

6割の科目が維持管理について出題

 選択科目によって内容はやや異なりますが、15年度はほとんどの科目が維持管理や人材不足、人口減少、防災・減災に関連したテーマから出題しています。

 中でも維持管理や長寿命化は「土質及び基礎」や「鋼構造及びコンクリート」のコンクリート、「河川、砂防及び海岸・海洋」、「電力土木」、「鉄道」、「トンネル」、「施工計画、施工設備及び積算」が取り上げており、建設部門の全科目の約6割を占めています。

 コンクリートで維持管理について出題されたのは2年連続です。14年度は予算や労働力の不足を背景として、課題や解決策などを述べる内容でした。15年度は、維持管理の中でも業務サイクル(メンテナンスサイクル)に着目しています。

 「河川、砂防及び海岸・海洋」も、14年度は「限られた財源の中での維持管理」をテーマとし、出題範囲は広く設けられていました。一方、15年度は維持管理の中でも業務プロセスのPDCAサイクルを対象としています。

 このように、施策などの進展に伴って、同じ維持管理であってもより具体的な内容について問う傾向が見られます。過去の出題とは題意が異なることに注意し、最新の話題や動向を踏まえて記述する必要があります。さらに、論述すべき内容が明示されている場合は、「はじめに」などの起承転結や論文としてのつながりよりも、各小問の内容にそれぞれ的確に答えることが重要です。

 維持管理と並んで防災や減災も、14年度に続いて頻出している分野です。15年度は「土質及び基礎」や「河川、砂防及び海岸・海洋」、「鉄道」が取り上げています。

 「鉄道」と同様に「鋼構造及びコンクリート」のコンクリートもIII-3で東日本大震災に触れていますが、コンクリートの場合は人材不足などを背景とした出題です。問題文の冒頭を読んだだけでは出題の意図を読み違える可能性があります。「施工計画、施工設備及び積算」のⅢ-1も、題意を把握しづらい内容です。出題文が長くて問われている範囲が広いうえに、文中の様々なキーワードに困惑する受験者もいたようです。

 IIIの論文では、各選択科目に関する課題解決能力が問われています。その科目の専門性に沿って論述する必要があることを忘れないようにしてください。小問なども含めて出題文をよく読み、題意を外さないことが肝要です。

 IIIの出題テーマはそれほど多岐に渡っているわけではありません。出題パターンも定着しつつあることから、対応しやすくなってきました。国の施策の方向性など時流を常に意識し、16年度の試験に備えてください。

 以下では「トンネル」の15年度の出題内容について、もう少し詳しくみていきます。

出題文に記された背景に惑わされずに

 13年度や14年度と同様に、2問とも (1)~(3)の三つの小問に分かれています。(3)では14年度などに続いて「実施の際に留意すべき事項」や「想定されるリスク」といった「残存リスク」について述べるよう求めています。

 テーマはIII-1が13年度と同じ長寿命化や維持管理です。設問の内容はオーソドックスで、対象とするトンネルの種別なども示されていません。幅広い視点で記述すればよく、答えやすかったはずです。ただし、トンネルの特性を踏まえて述べる必要があります。

 もう1問のIII-2の労働力不足は、14年度に複数の科目で相次いで出題されたテーマです。 (1)ではトンネル以外の分野も含めて述べればよく、(2)や(3)で選択科目である「トンネル」を意識して課題や解決策などを論述する流れになります。

 14年度に比べ、IIIの問題はいずれも容易な内容でした。長寿命化や労働力不足は多くの受験者が事前に想定していたテーマとみられますが、出題文の語句にとらわれてしまい、考えていたテーマと異なるものと誤解した人もいたようです。

 例えばIII-2の(1)に記された「社会的背景」。この用語に戸惑って論述する方向性を間違ってしまうようです。結果、(1)から順に記述していって、続く(2)や(3)で修正できなくなる例が見られます。題意と異なる内容を書いてしまうわけです。

 想定していたテーマであっても、出題文の内容まで全く同じケースはありません。小問の(2)や(3)で問われる課題や解決策などにはいくつかのパターンがあり、事前に正答を用意することも可能です。しかし、出題文の冒頭で示される背景などは時代とともに変わってきます。この内容に惑わされず、題意や本来の出題テーマを外さないよう注意してください。

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