「課題解決能力」を問うIIIの論文は、2016年度も13~15年度と同様に二つの問題から1問を選択し、600字詰め用紙3枚以内に2時間で記述する形でした。

 出題内容は、日本技術士会の「平成28年度技術士第二次試験の内容について」と題した資料にも記されているように、「最新の状況」や選択科目に共通する「普遍的な問題」を対象としています。なかでも、最新の施策や社会資本整備が抱える昨今の課題を背景に出題する傾向が強まってきたようです。

 解決策を提示した後に課題や留意点、デメリットといった「残存リスク」を記述するよう求める設問はさらに増え、16年度は8割の科目が小問の最後で尋ねています。

品質をめぐる昨今の不正などもテーマに

 16年度も維持管理や防災・減災を中心に、人口減少や少子高齢化、人材不足、環境、海外展開、品質などに関連したテーマから出題されています。ただし、それらの割合や問い方が変わってきました。

 16年度に防災・減災の分野から出題した科目は「河川、砂防及び海岸・海洋」や「トンネル」など建設部門の全科目の約3割を占めており、15年度と同等の割合です。

 一方、維持管理や長寿命化を取り上げた科目は減少しました。「鋼構造及びコンクリート」の鋼構造や「電力土木」、「道路」など全科目の3割程度になり、約6割に上っていた15年度に比べて半減しています。

 建設産業の人材不足をテーマとした科目は「施工計画、施工設備及び積算」だけでした。15年度までのように人材不足への解決策などを直接、問うのではなく、担い手の不足がもたらす課題を踏まえ、品質の確保や生産性の向上へとテーマが移ってきたようです。

 品質の確保については「土質及び基礎」のIII-1や「鋼構造及びコンクリート」のIII-3などが出題しており、さらに「トンネル」のIII-2では、建設工事における昨今の不正やトラブルなどを背景に、品質を確保するうえでの課題や解決策について尋ねています。

 出題文中に「品質」とは明示していませんが、「施工計画、施工設備及び積算」のIII-2では免震ゴム支承の偽装や落橋防止装置の溶接不良などの実例を示し、ユーザーの信頼を得るために取り組むべき方策を記述するよう求めています。

 品質の管理や確保は、建設部門の多くの科目にとって共通するテーマです。普遍的な問題としてだけでなく、建設産業や公共事業における昨今の事例や施策を踏まえた出題も想定し、17年度の試験に備える必要があります。

 先述の生産性の向上も同様です。13年度や14年度にも出題されましたが、16年度は「河川、砂防及び海岸・海洋」のIII-1などがICTの活用をテーマとしています。16年度から本格化してきた「i-Construction」を意識したものとみられます。

 このように時事性の高いテーマを押さえておくことは、維持管理や防災・減災、環境などの他の分野や科目でも欠かせません。旬な話題が目立つ16年度のもう一つの特徴として、設問によって難度に差がみられることが挙げられます。2問のうちの1問が、例年より難解だった科目が少なくありませんでした。

 例えば、「土質及び基礎」のIII-1は施工も含めて広い範囲にわたって記述する内容でした。もう一つの記述式であるIIのように、IIIでも施工に関する知識を確かめる傾向にあります。「鋼構造及びコンクリート」のIII-4は、コンクリートの出題では珍しい二酸化炭素の削減がテーマです。「トンネル」のIII-1では、地下構造物の防災・減災について問われています。

 記述する範囲が広かったり、題意を把握しづらいなど、難しいと感じた受験者は多かったようです。13~16年度に加えて改正前の過去問題にも目を通し、主要なテーマの背景や最新動向を確認しておきましょう。

 以下では「トンネル」の16年度の出題内容について、もう少し詳しくみていきます。

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