東京・銀座に2017年6月、オープンした「ミキモト銀座4丁目本店」。設計・施工を鹿島が担当し、外装デザインを内藤廣建築設計事務所が手掛けた。ガラスピース3万8000個を用いたファサードはどのようなプロセスで実現したのか。内藤廣氏に聞いた。(プロジェクトの詳細は、日経アーキテクチュア2017年8月10日号フォーカス建築「ミキモト銀座4丁目本店」を参照)

――内藤さんがファサードのデザインだけを担当するのは初めてですか。

 東京・六本木にかつてあった商業施設「WAVE」では、ファサードのデザインを手掛けています。1981年に独立してすぐのことです。菊竹清訓建築設計事務所時代にも、西武百貨店池袋店10期計画のファサードを担当しました。実は、“皮1枚”のデザインも得意なんです(笑)。

内藤廣建築設計事務所代表の内藤廣氏。略歴は以下の通り。ないとう・ひろし:1950年生まれ。76年早稲田大学大学院修了。菊竹清訓建築設計事務所などを経て、81年現事務所設立。2002~11年に東京大学教授を務め、現在は同大学名誉教授(写真:稲垣 純也)
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――ファサードの設計者も、設計・施工者と同様にコンペで選ばれたそうですね。

 コンペ時、どうしようかなと考えながら銀座の街を夕方歩いていると、銀座通り(中央通り)に斜めの光が差し込んできました。そんなに長い時間ではなかったと思います。そのときに、この光を建築ですくい取る方法が思い浮かびました。

 かつて、「海の博物館」(1992年完成)の現場に通っていた頃、近鉄線が三重県鳥羽市に入っていくときに視界が開けて海がぱっと見えるところがありました。海の博物館の現場が大変だったときに、キラキラ光る海を見て、いいなと思っていたのを思い出しました。

 同時に、金子みすゞの詩「海と空」が頭をよぎったんです。その中に「なんでなんでひかる。なかに真珠があるからよ」というフレーズがあります。海の中にある真珠が、宝飾品になる。海の輝きとその下に眠っている真珠の組み合わせはいいな、と。

銀座通りに面したミキモト銀座4丁目本店の全景。1974年完成の旧本店の建て替えに当たりコンペを実施。設計・施工は鹿島、外装デザインは内藤廣建築設計事務所がそれぞれ選ばれた(写真:吉田 誠)
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 コンペのプレゼンテーションにも、これを最初に出しました。どうやってそれを実現するかというと、ガラスのピースが適切かな、と考えました。富山ガラス工房(富山市)の名田谷隆平さんに3分の1のスケールでガラスブロックのモックアップをつくってもらいました。ほぼ、一発アイデアみたいなものです(笑)。

 そのときは、まだ「アーバンショーウインドー」と呼ばれている低層部の開口は出てきていませんでした。

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