「大きな被害が生じた住宅は、直下率が低い」――。熊本地震直後、日経ホームビルダー本誌がこのように報じた後、テレビや新聞が直下率の問題を大々的に取り上げたことから、一般建て主の間でも関心を呼んでいる。直下率とは、柱や耐力壁が上下階で揃っている割合を示す指標。これが、地震による建物被害とどの程度関係があるのか。この問題に詳しい、東京大学の坂本功名誉教授に話を聞いた。(聞き手は、日経ホームビルダーの荒川尚美記者)

日本建築防災協会耐震改修支援センター長を務める坂本功・東京大学名誉教授。3ページ目の資料や構造計画については、坂本名誉教授が執筆した「地震に強い木造住宅」(発行は工業調査会)に詳しく説明されている(写真:日経ホームビルダー)
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 今年1月、NHKの番組で直下率の特集が放映され、一般消費者の間で直下率はいちやく注目を浴びる存在になった。放映から1、2日後には、家内が「うちの直下率はどうなのか」と聞いてきた。

 その後で理髪店へ行くと、店の奥さんから「直下率って大切なんですね」と言われた。同じ日に、建築の素人である2人から「直下率」という言葉を聞く状況に、テレビの影響力の大きさを思い知った。

 テレビでは直下率と地震による倒壊を結び付ける形で説明していたが、直下率と耐震性は必ずしも関係ないとされている。ただし専門家によって、微妙にニュアンスは異なるようだ。

 例えば、2階直下に柱がない状態で接続する下屋部分は、下屋の水平構面や接合部が脆弱なことが多い。地震力を受けると、上階から伝わるせん断力が下階に伝わらず、そこで分断されて建物が壊れる。これを「直下率ではなく水平構面の問題」とする考え方もある。

 一方、そもそもこうした架構を考える人は適切な水平構面を設けないだろうから、直下率に関連するとの見方もできる。 

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