フランスのパリ郊外に、卵形のホールを持つ音楽施設が完成した。セーヌ川の中州に立つ「ラ・セーヌ・ミュジカル」だ。卵形のホールはガラスや木架構で覆われ、橋から眺めると、コンクリート製の巨船に大きな鳥籠が載っているかのように見える。「高い品質を追求しながら予算内に収めるため、素材の使い方を工夫した」。設計した坂茂氏は海外の現場での苦労について、そう語った。以下、坂氏へのインタビューの全容をお伝えする。

フランスで4月22日にオープン予定の音楽施設「ラ・セーヌ・ミュジカル」。セーヌ川の中州に立つ(写真:武藤 聖一)
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――「ラ・セーヌ・ミュジカル」の目玉といえるクラシック音楽向けホール「オディトリアム」は、内装に紙管と合板を使い、独自の模様を生み出しています。どのようにコストとの両立を図ったのでしょうか。

 「ラ・セーヌ・ミュジカル」は、私が手掛けた初めての音楽ホールになります。音響設計を依頼した永田音響設計の豊田泰久さんに教わりながら試行錯誤しました。

クラシック音楽専用ホール「オディトリアム」。オーケストラを入れて音響を確認している様子(写真:坂 茂)
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 当初は、紙管を横に置く形で天井を構成しようとしました。しかし、紙管の空洞は音響の面から避けた方がよいと指摘を受け、紙管を輪切りにして六角形のフレームに収める方法にたどり着きました。

 紙管の太さは4種類。径の大きな紙管は照明に合わせて配置しました。音は輪切りの紙管部分を通過し、その上にある天井で反射する仕組みです。

オディトリアムの内観。波打つ天井に、六角形の木製フレームと紙管で模様を描いた(写真:武藤 聖一)
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オディトリアムの天井に使った紙管には、4種類の太さがある。照明部分に径の大きな紙管を配置した(写真:武藤 聖一)
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 当初の提案から変更したことは結果的に良かったと思っています。紙管を輪切りで使用したのは初めてで、今までにない挑戦となりました。完成後に豊田さんから「ブラボー!」というメールが届いたときは、すごくうれしかったですね。

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