水戸芸術館(水戸市五軒町1-6-8)の現代美術ギャラリーで3月11日から、「藤森照信展──自然を生かした建築と路上観察」が始まった。開幕前日の3月10日に行われたプレス向けの内覧会では、藤森照信氏本人が各展示スペースの意図を記者たちに説明した。内覧会は笑いの連続だった。

藤森照信展の会場入り口(写真:日経アーキテクチュア)
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プレス内覧会で説明する藤森照信氏(写真右)。昨年オープンした多治見市モザイクタイルミュージアムに関する展示コーナーで(写真:日経アーキテクチュア)
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 唯一無二の“藤森ワールド”を隅から隅まで紹介したいのはやまやまなのだが、それだと“ネタバレ”になって見に行く気が減じてしまうかもしれない。ここでは計10ある展示スペースのうち、2カ所だけを厳選して紹介する。

 1つは展示動線の最終部近くにある「せん茶」。本展のために制作した目玉展示の1つで、古代の戦車からイメージを膨らませた「動く茶室」だ。

本展のために制作した動く茶室「せん茶」(写真:日経アーキテクチュア)
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 制作は筑波大学の貝島桃代研究室の学生が中心となった。制作メンバーのリストには、構造エンジニアの金田充弘氏(東京芸術大学准教授、アラップシニアアソシエイト)の名前も記されていた。「簡単に考えていたけれど、つくってみると構造的にけっこう大変だった(笑)。実際に引っ張ると動きます」と藤森氏。

中に人が入れるようにするため、本体下部や車輪はがっしりとしたつくりになっている(写真:日経アーキテクチュア)
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「せん茶」の説明表示(写真:日経アーキテクチュア)
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「せん茶」の室内。もともとあった開口部に高さを合わせて、自然光を入れた(写真:日経アーキテクチュア)
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 屋内の展示でありながら、茶室の中には外光が入る。「磯崎新さん(水戸芸術館の設計者)のつくった窓が展示室の不思議な位置にあったので、そこから茶室に光が入るように高さを調整した」(藤森氏)。つまり磯崎建築とのコラボレーションともいえる作品だ。また、藤森氏自身は口にしなかったが、アーキグラムの「ウオーキング・シティ」(1964年にアーキグラムのメンバーであるロン・ヘロンが発表した「歩く都市」の提案)へのオマージュという意味合いもありそうだ。制作の真意が分かりづらいがゆえに、鑑賞者はかえってその理由を考えたくなるのかもしれない。

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