山本理顕設計工場の設計で工事が進むスイス・チューリッヒの複合施設「THE CIRCLE(ザ・サークル)」。プレキャストコンクリート(PCa)を用いた柱は、見付け寸法が200mmと細い。山本理顕氏は、「緻密さ」こそがスイスらしさだと捉え、柱に表現した。

 チューリッヒ空港はチューリッヒ近郊のクローテンにある。チューリッヒ中央駅から電車で10分ほどと、チューリッヒの中心部に近い。発注者の空港運営会社「Flughafen Zürich(フルークハーフェン・チューリッヒ)」がこの場所に巨大な複合施設の建設を決めた理由の1つだ。

 「ザ・サークル」は地下2階、地上11階建て。空港に隣接することから高さ制限があり、最高高さは37.98mに抑えられている。敷地面積は約3万5000m2で、求められた床面積を満たすために、環状道路側のファサードは全体にカーブを描きながら、斜めに張り出している。

環状道路側のファサードは、この模型のように斜めに張り出す(写真:山本理顕設計工場)
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 建設中の現場を実際に見て驚くのが構造柱の細さだ。見付け寸法は200mm。コンペの設計要件の1つに「Swissness(スイスらしさ)」があった。山本理顕設計工場主宰の山本理顕氏は「緻密さ」こそがスイスの特徴だと考え、それを細い柱で表現することにした。

クレーンまわりからPCaの柱を施工している(写真:長井 美暁)
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PCaによる構造柱の見付け寸法は200mm(写真:長井 美暁)

 柱はすべてプレキャストコンクリート(PCa)でつくり、設置間隔は最も狭いところで675mm。その2倍の1350mmと4倍の2700mmを合わせて基本モジュールとしている。低層部はプログラムに応じて開口部を大きく取るために柱を抜き、建物の表情に変化を与える。そうすると高層部のほうが柱は多くなり、低層部の柱が負担する荷重は大きくなるが、見付け寸法200mmは共通。代わりに中層部以下の柱の見込み寸法を高層部の1.5~4倍にし、柱はPCaのみの構造システムを実現する。「思っていたよりもはるかに柱は細い」と山本氏。

構造システムのダイアグラム(資料:山本理顕設計工場)
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「北プラッツ」の完成イメージCG。「プラッツ」は計3つあり、「ガッセ」で結ばれる。「細い柱が外から見えることが重要」と山本氏(資料:Flughafen Zürich)
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 トータルコントラクター(TC)の決定前は、主にコストの関係からPCa柱と鉄骨柱の混合案で進んでいたが、山本氏の本意ではなかった。TCとともに実際の施工方法が決まるタイミングで、山本氏はその方向が変わることを期待して議論に臨んだところ、現在のTCが「すべてPCaでできる。そのほうが施工の都合もいい」と言い、望む方向で実現されることになった。TCに決まったHRS Real Estateは、ヘルツォーク&ド・ムーロンの建物も多く手掛け、「建築家をよく知っている」と山本氏は話す。

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