スイスの空の玄関口であるチューリッヒ空港に隣接する敷地で、「THE CIRCLE(ザ・サークル)」の工事が進んでいる。山本理顕設計工場が設計を手掛ける空港付属の複合施設で、2015年4月に着工した。延べ面積約26万m2の建物にはオフィスや店舗、ホテル、コンベンションセンター(会議施設)、大学病院などが入る予定だ。同プロジェクトの経緯を2回に分けてリポートする。まずは、設計者の選定方法やプロジェクトの推進体制などについてまとめた。

建設工事が進む「ザ・サークル」を空港ターミナルビルより見る。2017年12月1日に撮影(写真:長井 美暁)
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 敷地は道路と丘の間にあって弓なりで細長く、三日月のような形をしている。発注者の空港運営会社「Flughafen Zürich(フルークハーフェン・チューリッヒ)」は複合施設の設計者を選ぶために国際コンペを2009年に開催。山本理顕設計工場(横浜市)は「1つの大きな建築であり、1つの小さな都市のようでもある」という案で最優秀賞を勝ち取った。次点はザハ・ハディド・アーキテクツ(英国)だった。

完成イメージCG。右手が空港。丘側のグランドレベルは道路側より2層分高い(資料:Flughafen Zürich)
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 完成予定の複合施設は、道路側はガラスのファサードがひと続きであるのに対し、丘に面する側はいくつもの建物が集積してできたように凸凹している。山本理顕設計工場主宰の山本理顕氏は、「gasse(ガッセ:ドイツ語で路地の意味)」と「platz(プラッツ:ドイツ語で広場の意味)」からなるチューリッヒ旧市街にヒントを得て、「この街のような建築をつくりたいと思った」という。

完成イメージCG。1つの建築でありながら、丘に面する側は複数の建物が集積した街のよう(資料:Flughafen Zürich)
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 コンペには93社から応募があり、ポートフォリオなどの書類による1次選考で15社、提案書による2次選考で5社に絞られた。その後、発注者や審査員などとのワークショップが5社それぞれに対して約4カ月間に2回実施され、ワークショップをもとに修正した最終提案書で3次選考が行われた。時間をかけて設計者を選ぶやり方に、山本氏は「驚いた」と話す。

 「ワークショップでは、提案内容のここはどうなっているのかと詳しい説明を求められたり、こうできないのかと注文を受けたり、様々な質疑応答や意見交換があった。クライアントと設計者が対話を重ねて互いの考えを正確に理解・共有することに努め、それを建築に反映できるようにする。そのための時間をきちんと確保したうえで設計者を選ぶ方法は素晴らしいと思った」(山本氏)

 また、提案書の作成に当たり、1次選考後に2万スイスフラン(2009年当時、245万円相当)、2次選考後に8万スイスフラン(同、980万円相当)が各設計者に支給された。発注者は計70万スイスフラン(同、8575万円相当)を用意していたという。山本氏は「中国の『北京建外SOHO』のコンペでも、最終選考に残った3社それぞれに日本円で1500万円相当が支給された。日本のコンペはほとんどタダのような対価で提案させるものが多い。世界との違いを今回も感じた」と語る。

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