新国立競技場の建設現場で働いていた建設会社社員の過労自殺は、社会に衝撃を与えた。2020年東京五輪へ向けて活気づく建築界だが、負の側面が露わになった格好だ。労働環境に対する社会の目が厳しくなるなか、「働き方改革」が喫緊の課題となった。一方で「五輪後」の変化を見据え、技術・ビジネスの新たな取り組みが本格化している。日経アーキテクチュアが選んだ「2017年の建築界10大ニュース」で、1年間の主な出来事を振り返る。(日経アーキテクチュア)

1.「新国立」に厳しい目 過労自殺で労災認定

12月7日の新国立競技場建設現場の風景。整備スケジュールは地上躯体工事まで進み、全体工程の3分の1を終えた。現在は1日約1000人の現場作業員が働いている。2018年夏ごろからは屋根工事や外装・内装工事が重なるためピーク時には約3000人が現場に入る。労務管理の徹底が求められる(写真:日経アーキテクチュア)
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 2019年11月末の完成を目指して急ピッチで整備が進む新国立競技場。地盤改良工事の施工管理業務に従事していた男性(当時23歳)が、17年3月2日に失踪し、4月15日に長野県で遺体で発見された。自筆の短い遺書が残っており、警察などの関係機関は自殺と判断している。

 男性の勤務先は一次下請けの三信建設工業(東京都台東区)。失踪前の1カ月は時間外労働時間が211時間、徹夜での業務は3回に及んでいた。新宿労働基準監督署は10月6日付で、極度の長時間労働による精神障害の発症が原因だとして労災認定した。

 男性の自殺によって、新国立競技場の労働環境に厳しい目が向けられた。東京労働局は9月29日、「新国立競技場の建設工事に携わった762事業所のうち、37事業所は労働協定の上限を超えるなどの違法な時間外労働があった」と発表。新宿労基署は、元請けJVとなる大成建設に下請け会社の労働環境改善を求めた。

 大成建設は、発注者の日本スポーツ振興センター(JSC)が11月14日に開いた定例会見で、労務管理を一段と強化する施策を示した。建設現場に看護師を常駐させたり、無料の健康相談窓口を設けたりなどの仕組みを導入した。現場作業員の数は現在、約1000人。18年夏ごろには約3000人まで増えるため、労務管理の徹底が整備計画の成否を左右する。

 問題の背景には建設業界の人手不足が深刻化している実態がある。東京五輪関連の工事が今後本格化すれば、長時間労働が広がる恐れもある。政府の建設業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議は8月、「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」を作成するなど、官民を挙げた長時間労働対策がようやく動き出した。

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