2011年の東日本大震災で、液状化現象に見舞われた千葉県浦安市。あれから6年。首都直下型地震も想定し、液状化と地盤傾斜の両方を防ぐ手立てとして、従来と異なる発想の対策に挑んだ大規模住宅開発が進行中だ。

 波打つ道路や傾いた住宅、地面から突き出たマンホール─。2011年に東日本大震災が発生した後、千葉県浦安市の液状化した市街地の様子は、ニュース番組で連日報道された。同市は埋立地が多く、住宅開発に支えられてきた場所だ。市内で開発を行う企業や市にとって、液状化からのイメージ回復は急務だった。

 市は、11年11月に産官学によるコンソーシアムを発足。災害・液状化対策など4つの分科会を立ち上げ、毎週のように議論を重ねた。会員として参加したスターツグループはコンソーシアムの議論を踏まえ、現在、市内で分譲マンションと戸建て住宅、福祉施設を1つの街区内につくる複合開発「新浦安明海(あけみ)プロジェクト」を進めている〔図1〕。

〔図1〕浦安市内で約5万m2の住宅開発が進行中
「新浦安明海プロジェクト」は5棟で170戸の分譲マンション、90戸の戸建て、認可保育園や高齢者施設などの福祉施設が建つ3エリアで構成する。左の図は配置を示し、敷地西側に境川が流れる。右の図は、左図とは逆方向、敷地北西の角から見た完成予想図(資料:2点ともスターツデベロップメント)
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地盤と建築を一体で計画

 同計画の特徴は、地盤の液状化対策から、土地のエリア分け、それぞれの建物の設計までを、スターツグループ主導で一貫して行った点だ。

 「早い段階から建物の計画を固めたので、事業費を考慮しながら改良工事のシミュレーションを効率的に行うことができた」と、スターツ免制震構造研究所の中西力設計統括は話す。

 敷地の広さは約5万1900m2。浦安市東部で境川の東岸に位置し、09年にスターツデベロップメントらが都市再生機構から取得。その後、東日本大震災が発生した。

 敷地の一部は液状化し、護岸にも損傷が生じた。そのため地震対策として、液状化防止に加え、護岸が崩れても地盤が境川に向かって流れ、傾斜が生じないようにする対策が必要となった〔図2〕。地盤調査や3次元の解析などは、スターツ免制震構造研究所と応用地質が行い、工事は竹中土木が実施した。

〔図2〕エリアごとに適材適所で改良工事を計画
液状化と護岸損傷の2つのリスクに備える対策が求められた。敷地の内部と外周で異なる工法を組み合わせ、さらに敷地内部もエリアごとに平均改良率を変えた。平均改良率とは、改良対象面積に対する改良体の合計面積の割合(資料:スターツ免制震構造研究所の資料に日経アーキテクチュアが加筆)
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 採用した工法は大きく2種類。いずれも過去に実績のあるものだ。しかし、「住宅開発のために3次元解析などの検証を何度も行い、液状化と地盤の傾斜を両方防ぐために異なる工法を組み合わせた例は初めてだろう」と中西設計統括は話す。

 工法は、敷地の外周と内部で変え、外周には深層混合処理工法を採用した。同工法は、セメントミルクを軟弱地盤に注入して撹拌(かくはん)混合し、それらを並べて地中に壁をつくるイメージだ。砂地盤のせん断変形を抑え、周辺地盤との絶縁を図る。

 敷地外周のうち、北・東・西の3方には柱状改良体を1列に並べ、南の護岸側のみ、柱状改良体を2列の格子状に並べた。大地震で護岸が損傷した場合を想定し、格子状に並べた柱状改良体の部分に「第2の護岸」の役割を持たせるためだ。外周全体で、深さ約17mの改良体を約2300本施工した。

 敷地内部には静的締め固め砂杭工法を採用。ケーシングパイプを地中に貫入させ、砕石や砂などの材料をパイプから排出して地盤を締め固める方法だ。深さ約15mの締め固め砂杭を約1万8000本施工した。

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