既存の戸建て住宅の買い取り再販事業は、いかに見込み顧客が納得する家に仕上げるかで成否が決まる。なかでも、今後需要が高まる省エネ性能が高い住宅は、コストなどのさじ加減が難しい。買い取り再販事業を数多く手掛けるリビタの事例から、売るための省エネ改修のノウハウを学ぶ。

 東京都世田谷区代沢に建つ築30年の在来木造住宅。この戸建て住宅をリノベーションして1億5900万円で販売したところ、すぐに買い手が見つかった。リノベーション事業を手掛けるリビタとYKKAPが手掛けた、代沢の家プロジェクトがそれだ〔写真1〕。

代沢の家プロジェクト(世田谷区代沢)
  • 築年数:30年
  • 延べ面積:144.38m2
  • 構造:木造在来+鉄筋コンクリート造(地下)
  • 階数:地下1階、地上2階
  • 耐震性能:【改修後】評点1.5以上(耐震等級3レベル)、【改修前】評点0.42
  • 断熱性能:【改修後】HEAT20 G2レベル(UA値は0.46W/m2K以下)ZEH仕様、【改修前】推定のUA値は1.53W/m2K
  • 企画・事業主:リビタ
  • 設計監理:納谷建築設計事務所
  • 構造設計:ラムラックス
  • 施工:エコラボ・デザインハウス
  • 工事期間:2017年4月~6月
  • 総改修費:約3500万円
  • 販売価格:1億5900万円
〔写真1〕既存の躯体を生かしつつ意匠と性能を向上
築30年の戸建て住宅をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に改修した、代沢の家プロジェクト。スケルトン状態にして、既存の躯体を生かしながら、意匠性や住宅性能を高めた。1億5900万円で販売したところ、すぐに買い手が見つかった(写真:吉田 誠)
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 この家、単なるリノベーション物件ではない。住宅内の一次エネルギー消費量をほぼゼロにする、いわゆるネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)に改修したものだ。

 延べ面積は144.38m2。1階と2階が木造、地下が鉄筋コンクリート(RC)造という構成だ。この建物をフルスケルトン状態にして、リノベーションを実施した。耐震性能は耐震等級3相当。断熱性能はHEAT20(2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会)のG2相当とし、屋根には太陽光発電システムを搭載するなどしてZEH化を図った。

 同プロジェクトには、ある狙いがあったという。まとめ役を担ったリビタ戸建事業部の吉實健太郎部長は、次のように語った〔写真2〕。

〔写真3〕「ZEHだけが目標ではない」
代沢の家プロジェクトのまとめ役を担ったリビタ戸建事業部の吉實健太郎部長(右)と黒田大志グループリーダー(左)。断熱や省エネといった環境性能が高い住宅をつくる流れが今後加速していくと分析している(写真:日経ホームビルダー)
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 「ZEHにすることだけを最終目標としたものではない。既存住宅を改修して環境性能を高めた建物を残すという考えがベースにある。その在り方の1つとしてZEH化する場合はどうすればビジネスとして成り立つのかを試みた」

 そのため、ZEHに改修したという話題性だけではなく、売れるようにするためのプランづくりが求められたという。どのような改修を施すことで売れるリノベーション物件となったのか、その舞台裏を見ていこう。

[改修前]よくある中古住宅をZEH化

 プロジェクトの対象となった代沢の家は、ZEH改修に適しているなどの理由で選ばれたものではない。屋根面が東西に向いているなど、むしろ、ZEH化には不向きといえる物件だった〔写真3〕。一部条件が付いていたものの、「よくある中古住宅」だ。

〔写真2〕想定購入者に合わせ間取りを変更
(写真:リビタ)
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(写真:リビタ)
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改修前の建物は、1階にリビングやダイニングがある間取りだった。想定する購入者に合わせ、間取りは大幅に変更した(写真:リビタ)
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 売り主は60代後半の夫婦で、子供が独立したために家が広すぎると感じるようになり売却した。それをリビタが買い取り、同社の買い取り再販事業で扱った。

 「リビタが買い取る戸建て住宅の半数以上は、このような住み替え需要のもの」と、戸建事業部の吉實健太郎部長は説明する。

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