太陽電池パネルのうち、屋根一体型は、パネルの位置が燃焼材となり得る野地板や断熱材に近接する。外からの火を防ぐ性能があっても、ひとたびパネルから発火すれば、躯体に燃え広がる恐れがある。

cace1 屋根一体型(川崎市) 瓦の影で発熱・発火

 瓦の位置が数センチメートルずれて出火原因に――。屋根一体型の太陽光発電(PV)システムを備えた住宅火災の検証結果だ。

 火災が発生したのは2016年4月11日の午前11時半ごろ。川崎市高津区に建つ2階建ての戸建て住宅で、東面の屋根が燃えた〔写真1、2〕。人的被害はなかったものの、太陽電池パネルや野地板など約6.3m2が焼けた〔写真3〕。

〔写真1〕太陽電池パネルが火元に
戸建て住宅に設置された屋根一体型の太陽電池パネルから出火。屋根の一部が焼け抜ける火災に発展した。瓦の一部がパネルに重なり、継続的にホットスポット現象が起こっていたことが原因とみられている(写真:川崎市消防局)
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〔写真2〕通行人が発見し通報
焼損した戸建て住宅の外観(築約10年)。人的被害はなかったが、屋根一体型の太陽電池パネルなどが約6.3m2にわたって焼けた(写真:川崎市消防局)
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〔写真3〕屋根裏の焼損状況
複数の太陽電池パネルやその下部の野地板などが焼け、屋根裏から外部を見通せる状況となっていた(写真:川崎市消防局)
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 この住宅で採用していたのは、パネルが屋根材を兼ねるシャープ製の屋根一体型の製品だった〔図1、2〕。住宅を建てた住宅メーカー専用の製品で、06年4月に設置した。システムを構成するパネルは合計69枚。これらを二十数枚ずつ直列につないだ3系統に分け、屋根の南面に1系統、東面に2系統を配した。

〔図1〕張りめぐらした太陽電池パネルは69枚
合計69枚の太陽電池パネルを二十数枚ずつ3つの系統にグループ分けし、南面に1系統、東面に2系統をそれぞれ設置している。系統ごとに発電した直流電流は出力ケーブルでパワーコンディショナーに送られ、交流電流に変換して住宅で使用したり売電したりする仕組み。発火したのは東面の23枚のパネルによる系統だ(資料:川崎市消防局)
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〔図2〕太陽電池パネルの設置状況
出火した東面の屋根付近の断面図。太陽電池パネルが瓦を兼ねた構造だ(資料:取材を基に日経ホームビルダーが作成)
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 鎮火後の見分で川崎市消防局は、「焼損は屋根東面上部にある系統の太陽電池パネル数枚と、その下の野地板や断熱材などに限られる」、「発火の起点は東面やや上層にある11番パネル(図1を参照)の南端である」ことなどを確かめた。

 さらに、11番パネルを中心に検証すると、平板瓦との境界となる11番パネル北端で、隣接する瓦が本来の位置よりも数センチメートルパネル側にせり出していた。これによって太陽電池セルの一部に影が発生。そこが変色していた〔写真4〕。

〔写真4〕取り合い部で瓦がパネルを覆う
11番パネルの北側にある平板瓦の位置がずれ、パネルの一部を覆った(黄色の枠がパネルの位置)。その結果、セル上に影ができ、ホットスポットが発生した。その熱によって赤枠の箇所が変色している(写真:川崎市消防局)
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 「瓦は所定の位置からずれた印象だった。セルの変色は、影の影響で生じたホットスポットによるものだとみた」(川崎市消防局予防課調査係の山口雄太担当係長)。ホットスポットとは、影がかかった太陽電池の発電機能が阻害され、電気抵抗となって発熱する現象だ。

 一方、11番パネルの南端では、裏面の端子接続部であるジャンクションボックスがほぼ焼失。焼け残った出力ケーブルも、断線したり端子部が電気的に溶融したりした〔写真7、8〕。「端子の金属やバイパスダイオード回路(BPD、こちらを参照)などが溶け、楕円状の塊となってマイナス側のケーブル先端に付いていた」と山口係長は語る。

〔写真7〕端子部分には電気的溶融痕が
11番パネルのジャンクションボックスの焼損状況。マイナス側ケーブルの端子部分は電気的溶融を起こし、楕円形状の塊になっていた。一方、プラス側ケーブルは断線しており、先端には球状の電気的溶融痕が見られた(写真:川崎市消防局)
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〔写真8〕正常品は金属形状が明瞭
当初のジャンクションボックスはこのような状態だった。写真下に見えるのが、焼損・溶融したマイナス側端子(写真:川崎市消防局)
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