厚さ300mmの断熱に、温水暖房とパッシブ換気を組み合わせて暖房費半減の住宅を目指した。勾配天井と床下を含めて、高断熱住宅ならではの空間を最大限に活用している。性能を下げずに予算管理することを、設計者自らが実践した。

 札幌市を拠点に活動する設計者の山本亜耕氏は2009年以来、外壁に厚さ約300mmの断熱を標準化している。「北海道で一般的な厚さ150mmの断熱の場合、冬季の月間光熱費はおよそ5万円かかる。これを半減させる仕様を目指す」と山本氏は話す。

 16年秋に完成した「北広島の家」(北海道北広島市)でも、給湯、暖房、調理などに要した冬のLPガス費は月2万円を切った。

 一次取得者である若い建て主のために簡素な間取りとし、予算が足りない分は補助金を充てた(詳しくは「もっと 解剖! 300mm断熱を2200万円でつくる」参照)。一方で、「屋根断熱を生かした勾配天井のリビングと、基礎断熱によって室内化した床下の空間を最大限活用すること」(山本氏)に注力した〔写真1、2〕。空気の温度差を利用した「パッシブ換気」を採用し、動力を使わずに家全体の温熱環境を整えている。

〔写真1〕床下に温水暖房の管を敷設し、パッシブ換気を採用。屋外の給気口(左の写真)から取り入れた外気は吹き出し口の近くに置いたヒーターで暖める。暖気が上昇すると、新鮮な外気が床下に自然に流入する。外気の量は手動で調整できる(写真:山本 亜耕)
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〔写真2〕南外観。2階に突き出す袖壁は、日射遮蔽に加え、開口部が建築基準法上の「延焼のおそれのある部分」にかからないようにする役割を果たす(写真:山本 亜耕)
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 床下には温水暖房の管を敷き、外気導入用のダクトを設置した。ダクトの吹き出し口の近くにヒーターを置き、冬は温水暖房と共に外から取り入れた冷たい新鮮空気を暖める。

 暖められた床下空気は、壁やユニットバスの隙間を通り抜けて各階に上昇する。2階リビングに至った空気は、室内上部の壁に設けた排気口から排出する〔写真4〕。階段を下りてくる冷気は蹴上げのスリットで回収する〔写真3〕。屋根から床下まで徹底した高断熱・高気密化を図ったうえ、空気の取り入れ口を床下に集約することで、適切な空気の流れを生み出していく。

〔写真3〕階段室回り。階段室の下にボイラーを設置。階段蹴上げのスリットを通して階段を下りてくる空気を回収する(写真:日経ホームビルダー)
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〔写真4〕勾配天井で空間の広がりを確保した2階のリビング・ダイニング。壁の上部にパッシブ換気の排気口を設けた。高気密化した家で起こりやすい音の反響を抑えるため、天井は段状に組んだ有孔ボードで仕上げた(写真:山本 亜耕)
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 このほか、南面の開口の左右には袖壁を設けるなど、日射取得の制御にも配慮している〔写真5〕。

〔写真5〕北海道では一般的な板金で仕上げた外壁と袖壁回り(写真:日経ホームビルダー)
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