「動物の本能に近い部分にいかに気づき、満足させられるか」。前田敦計画工房の前田代表は、ペットの居心地向上を図る際の要点をこう語る。

 ペットと共生する住宅を手掛ける際に、前田代表はペットと飼い主との重要なコミュニケーションツールである「目線」を重視する。特に平面的な活動をする犬は、自分で変えられる目線の高さが限られる。飼い主と目線をそろえて対等にコミュニケーションを図りたいと望んでも、飼い主にしゃがんでもらったり抱き上げてもらったりしなければ難しい。

 そこで前田代表は、スキップフロアなど、適度な高低差をもたらすプランを組み込んで、犬自らが目線の高さを調整しやすくする〔写真1〕。

〔写真1〕スキップフロアの段差でペットと飼い主の目線の高さをそろえる
スキップフロアの段差でペット自らが飼い主と目線の高さをそろえやすくした。写真右の格子戸は背後にある階段からのペットの転落を防ぐだけでなく、スライドさせて写真左側にあるペットケージの仕切りにもなる(写真:前田敦計画工房)
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 スキップフロアと下層階との間にできた隙間は、ペットが入るケージなどとして活用できる。ケージの寸法も犬の目線に配慮して決めた。「寝室は天井が高すぎると本能的に落ち着かない。ケージ高さは目線の高さの1.5倍を目安にした」(前田代表)

 ほかにも、スキップフロアを使えば、人とペットの生活領域を立体分離できる。動物の苦手な家族や来訪者に、ペットが近寄りにくくするうえでも有効だ。

 居心地を追求するうえで健康は重要な観点だ。例えば、体重が重い犬に対しては、関節に負担が掛からないように床材の選び方に気を使う必要がある(「交換が容易な仕掛けを入れる」参照)。小型犬などでは、人が使う階段は勾配が急過ぎて転落によるケガやヘルニアといった事態を招きかねない。転落防止柵などで階段に進入させないような策を講じることが望ましい。

 スキップフロアなどに階段を設ける場合は、「犬が背中を伸ばした状態で昇降できるような傾斜にすべき」と前田代表は言う。過去に小型犬に対応したケースでは、体格に合わせて1段の高さを130mmに抑えたステップ型の収納家具を編み出した〔図1、写真2〕。

〔図1、写真2〕階段の傾斜は犬の体格に合わせる
スキップフロアとリビングをつなぐ階段を示す図面。ペットである小型犬が昇降しやすい傾斜となるよう配慮した(資料:前田敦計画工房)
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段差はペットが背中を真っすぐに伸ばして昇降できる高さ130×幅300mmで設計した(写真:atsushi)
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階段下の空間は収納スペースに(写真:atsushi)
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