住宅の「安全性」とは、壁を増やし、堅牢にすることだけが正解ではない。採光や眺望などの「快適性」、そして「コスト」が見合わなければ建て主の満足は得られない。構造部材に異素材を組み合わせることで3要素を実現した例を紹介する。

 鉄筋コンクリート(RC)造の壁式構造と鉄骨柱の組み合わせにより、大開口と自由な住戸プランを実現した集合住宅がある。東京・代々木の低層住宅が広がるエリア。その一角に、2016年12月に完成したコーポラティブ住宅「代々木テラス」だ。

 旗ざお形状の敷地面積は約340m2。地下1階・地上3階から成る建物に9件の住戸が入っている。住戸の中は、都心と思えないほどの静けさだ。隣地に迫る家々も大開口から眺めると1枚のスクリーン映像のように楽しめる。

街並みをスクリーンのように見せる
2・3階のメゾネットとなっているF住戸。写真は3階のリビング・ダイニング(写真:吉田 誠)
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 設計はフジワラテッペイアーキテクツラボ(東京都渋谷区)を主宰する藤原徹平氏が手掛けた。同氏がこだわったのは、「新しくつくる住宅が街にどのような構えを持つべきか」。東西方向に細長い敷地に対して、建物を1つの大きなボリュームとするのではなく、周辺の環境にスケールを合わせた。具体的には、建物の南北面で各2カ所に幅約2mのくぼみを設け、3つの棟に分節した。

天井高の異なる3棟構成
南北面の計4カ所のくぼみ(スリット)により、大きく3つの棟に分けた。構造的には一体のものとしてつなげた。東西の「端棟」に水回りと構造壁があり、「中棟」は鉄骨柱で開放的な空間とした(写真:フジワラテッペイアーキテクツラボ)
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 同時に、「3棟を完全に分けず、1つの構造体であることが重要だった」と藤原氏。「構造的に分けると、壁ができて別々の建築になる。だが、力学的に1つにつながる建築であれば、床と屋根で水平力の伝達があり、空間的なつながりも生み出せる」。

 3棟のうち、中央の「中棟」には各階とも大開口のある開放的な居室を設け、周辺の環境を室内に取り入れた。そうしたのには、快適性を高めることに加え、建物全体の荷重を抑えて杭をなくし、ベタ基礎でコストを抑える狙いもある。

 両側の「端棟」に水回りを寄せてパイプスペースを減らし、東西の建物外部に排管などの設備を出した。端棟よりも中棟の天井高を高くし、その階高差が、各住戸内の分節や、屋上テラスの起伏を生み、建物全体のバランスに寄与している。

 9つの住戸は上下左右に入り組むクロスメゾネットで構成している。いずれの住戸も南北両面に開口部を設けた複雑なプランだ。

 「このプロジェクトで意匠と構造、事業性を貫く考え方ができる構造設計者は、小西泰孝さんしかいない」。藤原氏はそう確信していた。

 初期段階から計画に参加した小西泰孝建築構造設計(東京都港区)の小西泰孝代表は、これまでに度々、コーポラティブ住宅の構造設計を担当してきた。そのなかに鉄筋コンクリート造と鉄骨柱の混構造を使ってプランを解いたケースがあり、それが藤原氏の記憶に強く残っていた。