人間の気持ちを察するのは難しい。自分自身のことを理解するのも難しいのに、他人のこととなるとさらなる難問になる。建築の設計においても、建て主の気持ちを理解し、いかにスムーズに接していくかが求められているだろう。堀部安嗣氏は、失敗しながらも、その生涯学習ともいえる難問に正面から向き合っている。(全3回のうちの第3回。この回のみ日経アーキテクチュア購読者限定)

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堀部安嗣氏(写真:鈴木 愛子)
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「秋谷の家」で知った、クライアントとの付き合い方

前回の〔ブレークスルー編〕で語られた「秋谷の家」での経験から、堀部氏はクライアントとの接し方の大切さを学んだ。

 「秋谷の家」のお施主さんは厳しい人でしたが、このシビアな経験から、クライアントとの付き合い方、プレゼンテーションの仕方、言葉遣い、話の持って行き方、そして気持ちの察し方などが、いかに大事かを学びました。「南の家」や「ある町医者の記念館」は、近隣から理解されなくても、クライアントは親戚でしたから、何があってもおおらかに認めてくれる相手でした。そういう意味では、「秋谷の家」において、クライアントを満足させながらも、自分自身も満足させないといけないという、シビアで楽しい建築の醍醐味を、知ることができたと思います。

「秋谷の家」の外観(写真:堀部 安嗣)
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 「秋谷の家」はもう20年以上前の仕事ですが、お施主さんとのやりとりが、無形のものとして、今も僕のなかに残っています。

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