和・洋菓子の製造販売を手掛ける「たねやグループ」が、新たな拠点として壮大な構想のもとに整備を進める「ラ コリーナ近江八幡」。建築史家であり建築家の藤森照信氏が設計した「草屋根」はそのメインショップだ。

駐車場で車を降りて生け垣を抜けると、八幡山を背に、芝で覆われた大きな屋根の建物が忽然と現れる。建物全体のユーモラスな造形とあいまって屋根の鮮やかな緑が際立ち、訪れた人の多くが足を止めて写真に収めようとする。前庭一面に植えてあるのはオカメザサ(写真:生田将人)
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1階は菓子売り場で、2階は喫茶スペース。中央に大きな吹き抜けがある。天井は漆喰塗り。そこから壁面にまで及ぶ黒い斑点は炭。叩き割った炭の小片を、たねやグループの従業員や近隣大学の学生たちがワークショップで貼り付けた(写真:生田将人)
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 同グループを率いる山本昌仁CEOの「丘のような建物にしたい」という希望を受け、藤森氏の頭に浮かんだのが山型の屋根の全面緑化。敷地周辺の環境を見て、「自然との接点となるような建築をつくりたい」とも思ったという。山型屋根の全面緑化は15年前、伊豆大島に建てた「ツバキ城」で経験がある。この時の方法を大規模に、かつ、より本格的に試みることにした。天然の土を用いた「ツバキ城」では土が流れ落ちてしまった教訓を生かし、今回はリサイクル軽量芝生マットを採用している。

 「建築緑化では、これまでに山ほど失敗している」と藤森氏は話す。実は今回も1月の開店後、夏を迎える前に南面の芝が枯れてしまった。山の湧き水を利用した灌水システムを屋根に設置しているのだが、共同設計者、アキムラ フライング・シー代表の中谷弘志氏によれば、「当初の区分けでは上部に水が回っていなかった」。

従業員や学生が参加した「草屋根」のワークショップ。まずは「芝ロール」づくりで、リサイクル軽量芝生マットと高麗芝をステンレス網の中に巻き込む(写真:アキムラ フライング・シー)
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「芝ロール」を軒先に設置。屋根の窓側面の手曲げ銅板もワークショップで製作した。「従業員がワークショップに参加すると、建物を大事にするだけではなく、できるまでの物語をお客さんに伝えられるようになる」と小西氏(写真:アキムラ フライング・シー)
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詳細図
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軒先からは常に水が滴り落ちているが、人が通る個所の上部には樋を設けている。「お客さんにも人気で、特に子どもが喜ぶ。山本CEOは『水のカーテン』と表現していた」と藤森氏(写真:長井美暁)
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