小田急線の鶴川駅から徒歩数分、川崎市麻生区に残る里山の農地における賃貸集合住宅の計画である。約4000m2に及ぶ敷地は市街化調整区域に入っているが、建て主の育った母屋、蔵、地域のための集会所の建つ約700m2の部分は宅地として用いてきたため、この中で建て替えを行うことが可能であった。賃貸住宅の企画・管理を手掛けるプリズミックが主催したコンペで、私たちSALHAUS(安原幹、日野雅司、栃澤麻利)が設計者として選ばれた。

 建て主は、愛着のある地元にふさわしい風景をつくるには、ハウスメーカーによる軽量鉄骨プレハブ造の賃貸住宅では十分でないと感じていた。設計に当たっての要望は、木造の建物とすること、もとの集会所の機能を残すことの2点であった。

 木賃アパートの印象があるため、「木造」の賃貸は不動産市場では不利になる場合がある。だが、そのよさを積極的に生かせば、皆で共有できる風景や、おおらかな生活の場をつくるために木造は向いていると考えた。軒を跳ね出した木の大屋根が共用部の上まで架かっているイメージは、設計の最初期から思い描いていたものである。

南棟の住戸8から北棟を見る。軒は最大で2.5m跳ね出している(写真:矢野紀行)
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上空から見る。建て主の所有地全体では4000m2程度ある。うち約700m2を利用。敷地を2分割し、崖地側の南棟は1階をRC造、2階を木造としている(写真:小林唯史/キャベッジ・ネット)
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