建築基準法は終戦から5年後の1950年にできた法律です。戦災復興のさなかにつくられた法律ですから、当然、「新築」を重視して考えられています。現在のように、改修や増築など「ストック活用」が誰にとっても身近な時代になると、あちこちから「分かりにくい」「ハードルが高すぎる」という声が出てくるのは必然ともいえます。

 2018年2月8日号の特集は、「ストック時代の羅針盤 変わる法制度2018」です。

(写真:beeboys/Shutterstock.com)
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 特集の前書きと目次を引用します。

 「住宅市場などを中心に建築物のストック活用時代が本格的に到来しつつある。法制度の動きでも近年、そうした社会情勢を背景にした改正・見直しが目立つ。改正法案の国会提出が迫る建築基準法は、既存建築の用途転用などが重要課題。改正宅建業法に基づく既存住宅のインスペクション制度は4月から動き出す。『ストック活用』を切り口に押さえておくべき法制度の動きをピックアップした」

 PART1は、通常国会に提出される見込みの建築基準法改正案のうち、ストック活用に関わる部分の先読み解説です。PART2は、4月からの施行を控える改正宅建業法の「インスペクション制度」の解説と課題の整理。PART3は2年後に施行が迫った改正民法に関して、「契約」が建物の竣工後に及ぼす影響を解説しました。総ページ数は14ページですが、密度の濃い特集です。

 特集の内容の一部を紹介すると、建築基準法の改正案は、住宅を中心に「用途変更」を実現やすくすることが大きなテーマとなっています。

建築基準制度部会で議論してきたテーマのうち、既存建築ストックの用途変更や増改築の円滑化に関する重点課題の一部。老人ホームなどの施設整備の負担軽減効果を期待した制度見直し案だ(資料:国土交通省資料をもとに日経アーキテクチュアが作成)
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 例えば、3階建て以下で延べ面積200m2以下の小規模住宅を飲食店に用途変更する場合、現状では主要構造部を準耐火構造などから耐火構造にしなければならないので、内装を剥がして対象箇所に防火被覆を施すなど、大掛かりな改修工事が避けられません。改正案のたたき台をつくる建築基準制度部会の検討過程では、こうした課題に関する見直しの方向性が幾つか示されました。先の小規模住宅に関しては、旅館や物販店舗に用途変更する場合、警報設備やスプリンクラーの設置を条件に、既存と同じく主要構造部に耐火構造以外を認める見直し案が示されています。

 建築基準法の改正は、基本的には条件付きでストック活用の「ハードルを低く」する「緩和」の方向です。それ自体は建築実務者にとって歓迎すべきことでしょう。ただ一方で、部分部分を緩和することにより、冒頭で挙げた「分かりにくい」「ハードルが高すぎる」のうち「分かりにくい」の方はますますレベルを上げる結果になっています。法は緩和されたとしても、それを理解して使う人が増えなければ社会的な意味はありません。編集者の立場でいうと、そろそろ法律自体を「新築編」「改修(大規模修繕)編」「増築編」に分けて整理してはどうかと思うのですが、国土交通省の方、いかがでしょうか。

 さて、そんな分かりにくい改修・増築の法規の運用実態について日本で最もよく知っているともいえそうなのが青木茂建築工房。同事務所の幹部スタッフによる実務セミナーを、3月7日に東京ビッグサイトで開催します。

▽日経アーキテクチュア 専門セミナー

青木茂建築工房の秘伝公開!
改修で失敗しない素材&技術講義
日時:2018年3月7日(水)13:30~16:30
会場:東京国際展示場「東京ビッグサイト」会議棟 6階
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 日経アーキテクチュアは雑誌、ウェブ、セミナーとそれぞれの特性を生かして、これからも建築実務者に有用な情報を発信していきます。引き続きよろしくお願いいたします。

出典:2018年2月8日
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。