社会に向けて、どういうブランドを構築するかを考える。佐藤可士和氏の仕事は、こうした「ブランディング」が中心だ。このときに最も大切なのが「トータルなクリエイティブディレクション」だという。例えば佐藤氏がデザインを手がけた携帯電話「FOMAN703iD」。インターフェースやタイポグラフィだけでなく、広告やカタログ、店頭の什器に至るまで、すべてに目を光らせた。その結果、これまでにない統一感が明確なメッセージとなり、消費者の心をつかむことに成功した。

 「最近はブランディングの仕事に、必ず“空間”が含まれる」と話す。ユニクロの世界進出の仕事では、ロゴやウェブサイト、買い物袋とともに、ニューヨーク旗艦店も「メディア」の一つととらえ、同じコンセプトのもと、デザインの方向を決めた。クリエイティブディレクターとしてリニューアルを進めた「ふじようちえん」では、「このプロジェクトで一番重要なメディアは園舎だ」と考えた。

 建築は強力なメディアになり得る。このことに、当の建築界はどれだけ気付いているだろうか。佐藤氏は、ブランディングという観点から眺めると、最近できた再開発ビルには「クリエイティブ全体を統括する目が感じられない」と言う。その理由を「父が建築設計をやっているのでわかるのだが、設計者の多くは建築がすごく好きで、そのぶん善くも悪くも建築の世界に完結している」と分析する。グラフィックデザイナーは、「コミュニケーションのデザインという意識が高いので、ある意味ミーハーなところがある。多方面にアンテナを張り、幅広い視野を持っている人が多い」。そこに建築界との違いを感じるそうだ。

 佐藤氏にとって建築は、アートや音楽、ファッションと同列にある。「どの分野かではなく、面白いことをやっている人に興味がある」という。「ヘルツォーク&ド・ムーロンの建築は注目していたので、テート・モダンは出来てすぐにロンドンに見に行った。それは好きなアーティストの作品を見たり、ミュージシャンの音楽を聴くことと全く同じ感覚」。

クリエイティブディレクターとしてコンセプトとデザインを統括した。園舎の設計には手塚貴晴氏・由比氏を起用(写真:サムライ)
クリエイティブディレクターとしてコンセプトとデザインを統括した。園舎の設計には手塚貴晴氏・由比氏を起用(写真:サムライ)

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