まずは地区に賑わいをつくる

 オガールタウンは、最寄りのJR紫波中央駅から県庁所在地の盛岡まで約20分、花巻、北上など県内主要都市にも近い。東北自動車のインターチェンジもあり交通の便はよい。とはいえ、好立地ということだけなら近隣の駅前と大差はないともいえる。

 オガールタウンの特徴は、商業施設、公共施設などを集めるオガール地区(図6)全体の整備の中に組み込まれている点だ。

図6  オガール地区の概要ーー駅前に町役場庁舎、産直施設、スポーツ施設などとエコ住宅を一体開発
オガールとは、紫波地方の「成長する」という意味の方言「おがる」とフランス語の「駅:Gare」を合せた造語。稼働中の岩手県フットボールセンターとオガールプラザは多くの交流人口を呼び寄せている。オガールベース、町役場も工事が進んでいる。オガール地区の賑わいがエコ住宅街「オガールタウン」の価値も高める(資料・写真:(5)紫波シティホール、(6)オガールベース、(1)~(4)日経アーキテクチュア)

 この地区は「オガールプロジェクト(紫波中央駅前都市整備事業)」として2013年度の土地活用モデル大賞国土交通大臣賞を受賞している。10年以上未利用状態だったJR紫波中央駅前の町有地10.7haを、PPP(公民連携)の活用やプロジェクトファイナンスによる資金調達などの手法で整備を進め、人口約3万4000人の紫波町に賑わいを創出したことが評価された。

 現在、官民複合施設「オガールプラザ」(町立の図書館、情報交流館、子育て支援センター、民営の産直販売所、カフェ、居酒屋、医院などが入居)、岩手県フットボールセンターが稼働している。オガールプラザに入る産直販売所「紫波マルシェ」には年間21万人、図書館と情報交流館には計30万人を呼び寄せた(12年6月~13年5月実績)。

 さらに14年7月には、バレーボール専用体育館、宿泊施設、コンビニエンスストアなど店舗が入居する民間複合施設「オガールベース」がオープンする。PFI(民間資金を活用した社会資本整備)で整備する町役場の建設も15年5月の完成を目指して工事が進んでいる。こうしてオガール地区全体の賑わいを生み出すことで、強気とも見える高品質な住宅の建築条件を付けた宅地分譲に踏み切れたのだ。

コストダウンの工夫も必要

 「オガールタウン」の分譲面積は区画当たり220m2前後、価格は1000万円前後だ。紫波型エコハウス基準で建てる住宅の建設費は「モデルハウスは坪92万円弱掛かったが、坪70万円程度で建てられる。価格の高い大手ハウスメーカーになら対抗できる」(紫波町の鎌田氏)という。

 とはいえ、岩手県で一般的な住宅の建設費は、断熱性能は紫波型エコハウスほど高くない前提とはいえ坪50万円前後という声も聞かれる。現状だと購入希望者が「やや高め」という感覚を持つこともありそうだ。紫波型エコハウス基準の断熱施工を、オガールタウンだけでなく地域の住宅産業の強みとして普及させていくには、さらなるコストダウンが求められる。例えば地元事業者による共同購入などの工夫も必要になるかもしれない。紫波町では、東京都府中市でエコタウン「ソーラータウン府中」の開発を進めた相羽建設常務の迎川利夫氏を講師に招いて施工現場でのコストダウン手法などについてセミナーを開くなど、対策に着手し始めた。

 オガールタウンという住宅街は、まだ現時点では「成功事例」とまでは言えない。とはいえ、まずは複合施設などで賑わいを生みだし、地区全体の価値を高めたうえで、高品質で持続可能な住宅街区を開発していくというステップの踏み方は参考になりそうだ。