若手の構造家として存在感を増し、設計コンペではパートナーとして設計者から引っ張りだこに。佐藤淳氏が鉄骨造や木造を通して提案する構造は、軽やかで大胆だ。2010年からは大学で研究室も持つ。斬新な構造の実現に向け、実験や研究を重ねる考えだ。


佐藤淳構造設計事務所の佐藤淳氏。2010年から東京大学の特任准教授も務める(写真:柳生 貴也)

 佐藤淳氏が佐藤淳構造設計事務所として独立後、構造設計を手掛けた「公立はこだて未来大学研究棟」(2005年)では、建築家・山本理顕氏の下で、フラットバーで格子壁を組んで透過性のある構造体を実現した。注目されたのは、その繊細さと柔らかさだ。

 実は、山本氏との協働は初めてではない。木村俊彦構造設計事務所で最後に担当したのが、同じく山本氏の手になる「公立はこだて未来大学」(2000年)だった。佐藤氏は独立してから、山本氏や小嶋一浩氏(CAt)、藤本壮介氏(藤本壮介建築設計事務所)らとの協働を通して、場合によっては無謀にも見える大胆で軽やかな構造を、緻密な設計によって生み出している。

群馬県農業技術センターの模型写真。スギ材を引っ張り材に用いた屋根架構が特徴だ。若手3人が共同主宰するSALHAUSがコンペで勝ち取った。佐藤氏が構造を担当している(写真:SALHAUS)

群馬県農業技術センターの全体模型。同センターは、農家の経営安定や安全・安心な食料生産を支える農業技術の開発を促進するため、研究拠点を再編整備する(写真:SALHAUS)

群馬県農業技術センターの棟部分の構造パース。スチールで構成した棟からスギの梁材を斜めに編み込むように架け渡す(資料:SALHAUS)

 佐藤氏は2010年4月から東京大学の特任准教授として教育・研究活動も始めた。構造設計に欠かせない実験も行い、実作のプロジェクトと所々でリンクする。現在の研究はどれも、佐藤氏のメーンテーマである「繊細な構造」「柔らかい構造」の追求に帰着している。

 例えば、10年9月から始めた木材のメッシュ架構の引っ張り試験は、SALHAUSが設計を手掛ける「群馬県農業技術センター」の屋根架構に参照される。この屋根は、木材を格子状に組んだ広いメッシュ状の構造を持つ。実現に向けて、長期に木材を引っ張り続けたときの変形を把握する必要がある。佐藤氏は09年のコンペ時から構造を担当している。

東大で木材の引っ張り試験をしている。2010年9月から実験を開始し、できれば1年以上は実験を続けたいという(写真:東京大学佐藤淳研究室)

木材の引っ張り試験は、スチール材と接合した木材の伸縮量をつかむためのもの(写真:東京大学佐藤淳研究室)

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