ドイツ・ミュンヘン市で2年に一回開催される建築の総合見本市「BAU(バウ)」。世界の省エネ技術の先端を走る製品や技術が毎回展示・紹介されることで定評がある。今年1月に開かれた展示会は過去最高の25万人の来場者を集めて盛況のうちに終了した。会場を視察した設備設計者の小室大輔氏(一級建築士事務所エネクスレイン代表)によるリポートを2回にわたって紹介する。(編集部)


技術の限界に挑戦した試作品も展示

 このような見本市では、新しい技術に注目が集まることも多い。主力製品を全面的に押し出すことに精力を注ぐ会社がある一方で、技術の限界に挑戦した試作品や、数年後の市場を意識した製品を展示する会社もある。

 日本の現状に慣れてしまった感覚からは、一見、無駄な努力のように見えなくもないが、その裏には、どこまでできるかを実直に検討し、試行錯誤を繰り返した結果を惜しげもなく見せる潔ささえ感じられる。

 例えば、ハインツェグラス(HEINZEGLAS)社とウニグラス(UNIGLAS)社は、共同で製作した、ガラスが3枚で中空層が2層ある世界最大の断熱ガラスを屋外にさりげなく展示していた。幅18m、高さ3.3m、重量は約4.5トンある。おそらく大きすぎて会場内に入れることができなかったのかもしれない。これだけ大きなガラスの発注がすぐにあるとは思えないが、その技術力を生かせる機会を探っているのだろう。

ハインツエグラス(HEINZEGLAS)社とUNIGLAS(ウニグラス)社が共同開発した世界最大の3層複層ガラス。幅18m、高さ3.3m、重量は約4.5トンある。将来の需要の有無を気にすることなく、どこまでできるかを徹底追求した結果を潔く展示している。近いうちに、この技術力が求められる日が来ることになるのだろう(写真:小室大輔)

 同じくガラスの分野で革新的な技術力をもつゼーレ(seele)社は、開口部と一体となったガラス張りの外壁「アイコニック・スキン SFC」を開発、展示していた。

 アルミ製の枠の外側と内側にガラス板を施し、中空層となる部分には断熱材を入れたもので、いわゆるガラスとアルミを組み合わせた自立型の大型パネルである。これらを幅25~30mmの目地部材でつなぎ合わせて建築空間をつくり出すことが可能だという。既にさまざまな試験を行い、3層のモデルハウスの建設にも成功している。

ガラスの分野で、革新的な技術力をもつゼーレ(seele)社は、ガラスとアルミを組み合わせた「iconic skin SFC」という外壁を新たに開発した。既に各試験を終えて、同社の敷地内にモデルハウスを建設するに至っている。詳細は、www.iconic-skin.com(写真提供:seele/iconic skin/BAU2015/Messe Müenchen GmbH、撮影:Olaf Becker)

ゼーレ(seele)社が開発した、ガラスとアルミを組み合わせた「iconic skin SFC」という外壁。詳細は、www.iconic-skin.com(写真:小室大輔)

 このように需要の有無を短絡的に判断するのではなく、ガラスが持つ可能性を限りなく追求することで新しい市場を開拓していこうとする大胆な思考と姿勢に触れることができるのも、BAUの魅力の一つであろう。

フラッハグラス・マルケンクライス(FLACHGLAS-MARKENKREIS)社による、ガラスの新たな可能性の提案。一般の合わせガラスの裏側に特殊なシートを貼り、両側からLEDを当てると不思議な奥行感が生まれる。文化施設や温浴施設、バーのカウンターなどに使われることが多いという(写真:小室大輔)

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