新国立競技場国際デザイン・コンクールで審査員を務めた建築家の内藤廣氏(写真:花井 智子)

 新国立競技場国際デザイン・コンクールで審査委員を務めた建築家の内藤廣氏が、国立競技場をめぐる議論に対し自らの意見を表明した。「異議を唱える諸氏は、振り上げた拳をどこに下ろすつもりなのか」と問い、「ザハに最高の仕事をさせることが最善の策だ」と訴えた。12月9日、自身のウェブサイトで文章を発表した。

 内藤氏が新国立競技場について意見を表明するのは初めて。ザハ・ハディド・アーキテクトを最優秀賞とした審査委員会の一員として「結果に対して責任を負っている」、「審査委員長の発言や公式発表を越えた発言は、可能な限り控えたい」としたうえで、内藤氏個人の見解と危惧を述べた。

 内藤氏の文章は、ザハ・ハディド・アーキテクトの案を評価する内容。「ザハ生涯の傑作をつくらせるのが座敷に客を呼んだ主人の礼儀だ」、「奇異な形に見えるかもしれないが、これを飲み込んでこそ、次のステップが見えてくるのではないか」などとした。

 危惧の1つとして、設計者であるザハ・ハディド氏のやる気を挙げた。「ザハにしてみれば、座敷に呼ばれて出かけて行ったら袋叩きにあった、という気持ちかもしれない」と推測し、「(新国立競技場は)そこそこでいい、ということになったらこれ以上残念なことはない」と綴った。

 建築家の槇文彦氏が意見を表明したことに対しては、「全く違和感はない。勇気ある発言に敬意を表す」とした一方で、「署名運動にまで広がりを見せるとなると、違和感は増すばかり」、「団体名で提出した署名は、その団体の意見表明となるわけだが、その団体はこのプロジェクトに対して本気で水を差す覚悟があるのか」と問うた。

 また、「この国では縮小方向で議論をまとめていく傾向がある」と指摘し、「異議を唱える諸氏は振り上げた拳をどこに下ろすつもりなのか。国立競技場の建設を止めさせれば満足なのか、五輪招致を見送れば満足なのか、どこまで成果が得られれば矛を収めるつもりか」と続けた。

 建物の規模については、「現在示されている縮小案は、ずいぶん小振りになり、景観的にも絵画館から見てそれほど威圧感のないものになった」としたうえで、「あまり控えめになるのも心配だ。私自身は、どうせやるのなら、この建物に合わせて東京を都市改造する、くらいの臨み方がよいと思っている」と個人的な意見を述べた。

 内藤氏は、デザイン・コンクール審査委員という当事者の1人として、槇文彦氏など多くの建築家が名を連ねた「新国立競技場に関する要望書」の発起人や賛同者には名前を並べていない。

 以下に、内藤氏の許可を得て、12月9日に発表した内藤氏の文章を全文掲載する。

〈追加情報〉内藤廣氏は12月16日付で、発表した文章を修正した。ジャン・ヌーベル氏がデザインパートナーとして設計に協力した電通本社ビルについての内容を「やや極端な表現なので削除」し、神宮内苑について「墓稜としたのは誤記なので、祭祀の場に修正」した。以下の全文掲載では、修正を打ち消し線などで反映した。(2013年12月17日 14時30分)