岐阜県岐南町は6月9日、新庁舎等設計者選定設計競技の最終審査(第3次審査)を実施し、kwhgアーキテクツ(東京都杉並区)を最優秀賞に決定。7月4日に、最終審査に残った6案と審査講評を公開した。kwhgアーキテクツは、昨年7月に開館した複合文化施設「武蔵野プレイス」(東京都武蔵野市)で注目を集めた。同事務所の川原田康子代表、比嘉武彦代表は岐南町新庁舎について、「これまでの定型のイメージを超えた新しい公共空間の在り方を提案したかった」と語る。

 設計者の選定は公募型設計競技方式。応募者ではなく案を選ぶ形式で、最優秀案が決まるまで誰の案なのか分からない匿名型のコンペだった。応募者によるプレゼンテーションは行わなかった。選定委員会のメンバーは、西沢立衛横浜国立大学大学院Y-GSA教授、松隈洋京都工芸繊維大学教授、室伏次郎神奈川大学名誉教授の3人。委員長は置かず、3人の票と議論によって最優秀賞を決めた。次点に当たる優秀賞はみかんぐみ(横浜市)だった。

 kwhgアーキテクツの案のコンセプトは、「街につながり人が集まる庁舎」。設計対象である庁舎と中央公民館、保険相談センターを個別に計画するのではなく、融合した複合施設として提案した。5階建ての庁舎棟の周りに低層棟を配置し、ゆるやかな曲面の屋根で覆う。屋根は平面的に3方向のカーブを持つT字形で、敷地の全方向から市民を呼び込む。

kwhgアーキテクツが提出した案。コンセプトは「街につながり人が集まる庁舎」。大屋根による低層部と中層の庁舎棟からなる(資料:岐南町)

 南側と西側の大きな屋根の下に、それぞれ中央公民館と保険相談センターが入る。建物の間の半屋外の空間には共通ロビーなどを設ける。これらの屋根の下の空間を、kwhgアーキテクツは「大きなバザールのテントのような空間」と表現する。街の四方に対して開き、人が集まる場としての楽しさをつくり出す提案だ。

 こうした提案に対して、各審査員は次のように評した。

 「建物に用事がない人も立ち寄れるような都市動線空間を屋根の下につくり、3つの機能を超えた大きな公共空間を提示した。また屋根が作り出すランドスケープは、雄大な風景と同時にヒューマンスケールの低い軒をつくり出し、その開放性、内外の連続性に、みんなの公共建築としての説得力を感じた」(西沢氏)

 「ほかにはない最大の特徴は、3つの機能をバランスよく配置して、全方位に開かれた裏表のない建物にまとめあげていること、そして、大らかな曲面の屋根の下に広がる町民のための普段使いの空間の存在である。シンプルな庁舎棟の塔と組み合せたその対比的な造形は、長い将来に渡って、町のシンボルとしての姿を保証する建築的な強さを備えていると思う」(松隈氏)

 「外気の軒下を含む寄り付きの空間の存在は、各々のプログラムへの対応のみならず3施設が一体となる事で生みだされ、この街区全体が公園のように機能し町民の拠り所となる為のポテンシャルを高めている」(室伏氏)

 kwhgアーキテクツの川原田氏と比嘉氏は、今回のコンペの案を詰めるに当たって、「武蔵野プレイスを設計した経験が生きた」と話す。以下に、一問一答を掲載する。

ここからは有料会員の登録が必要です。