執務スペースのデスク配置にはオフィスに対するその企業の考え方が色濃く反映される、とつくづく感じる。デスクをあえて不整形に並べたり、最短距離で行き来できない動線設定にしたり。社員同士のコミュニケーション活性化とスペース効率とを天秤にかけながら、あの手この手の工夫を凝らす企業が増えている。

 そんな事例に多数接してきた本欄でも、クロスカンパニー(岡山市)東京本部のレイアウトは初めて目にする方式だった。部長や課長などマネジャーのデスクを横に2つ並べ、その周りを部下のスタッフのデスク6つ(一部5つ)が扇形に取り囲む。中央の2席と扇形のデスクが向かい合う格好だ。窓側に沿って、この扇形が5組。さらに執務スペースの中央には、2つの扇形を反転させて円状に組み合わせたデスクの並びが、同様に5組連なっていく。

 「以前のオフィスではデスクの前にローパーティションを立てていたため、座席からの視線は遮られていた。それに対して今は、目の前にいる上司と顔を向き合わせているので、着席したまま気軽に声を掛けられるし、相談もしやすい。近くの席の人とのやり取りもよく聞こえるから、自然に情報共有できるようになった」。クロスカンパニー社長室の松浦祝子・広報チーム課長は、新しいデスクレイアウトの効果をそう表現する。

上司に向かって部下のデスクを扇形に並べた。クロスカンパニーでは、このレイアウトの概念を「CELL ACTIVATION(細胞活性化)」と呼んでいる(写真:守山 久子)

 1994年、女性向けのセレクトショップとして岡山市で創業した同社は、その後女性向けを中心とするアパレルの製造販売を開始した。現在は、ブランドキャラクターに女優の宮崎あおいを起用したearth music & ecologyをはじめ、E hyphen world gallery、Green Parksなど計11のブランドを展開する。岡山市の本社には、労務などの一部管理部門を配置。2014年6月、港区赤坂の草月会館から中央区銀座4丁目の歌舞伎座タワー17・18階に移転した東京本部には、各ブランドを運営する事業部や通販や店舗開発に加え、管理系の部門など約160人の社員が働いている。

 2000年に開設した東京本部はこれまで港区赤坂のほか渋谷区神宮前など、アパレル関係の会社が多く集まる青山周辺で居を構えてきた。なぜ今回、これまでとは趣の異なる銀座エリアへの進出を選んだのだろうか。

 理由の1つは、銀座という街の世界的な知名度の高さだ。9月26日、クロスカンパニーとしては初めて、世界展開を目指して立ち上げたブランド『KOE』をデビューさせた。「世界に向けた発信を考えると、銀座のブランドイメージがもたらす効果は大きい。しかも『歌舞伎座のビル』なら、すぐ分かってもらえる(笑)」

 歌舞伎座タワーを選んだもう1つの理由は、フロア面積の広さにある。青山エリアはアパレルブランドが集積しているのが利点だが、いざ新拠点を探してみると、どちらかといえば古くて1フロア面積の小さなビルが多かった。その点、歌舞伎座タワーは、以前の約4倍に当たる1フロア約1730m2の賃貸面積を備える。新しいビルなので、セキュリティーや省エネルギーといった各種性能面でも優れている。「新しく質の高いビルに入り、社員の意識とモチベーションを高めたい」という石川康晴社長の意向にもかなっていた。

クロスカンパニーが入居する歌舞伎座タワー。地上29階建てのオフィスビルの低層部に、歌舞伎座が入る(写真:守山 久子)

18階にあるクロスカンパニーの受付(写真:守山 久子)

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