あらい・ひとし:プリンストン大学客員研究員や東北大学大学院教授などを経て、現在、東京大学大学院数理科学研究科教授。理学博士。専門は解析学。1997年に日本数学会賞春季賞を受賞した。2005年、視覚や錯覚を数学的に研究する「数理視覚科学」を提唱。同研究で、平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞した。著書に「ウェーブレット」(共立出版)など多数。(撮影:稲垣 純也)

 真横に並んでいるはずなのに、右上がりや右下がりに傾いて見える文字列を知っているだろうか。2005年にインターネットの掲示板などで流行した。例えば、「コニア画」といった文字列を連続して並べると、錯覚によって傾いて見える。このような文字列を「文字列傾斜錯視」と呼び、研究対象にした数学者がいる。東京大学大学院教授の新井仁之氏だ。

2005年ころ、新井氏がインターネットの掲示板などで見かけた「文字列傾斜錯視」の例。繰り返しの文字列が、右上がりあるいは右下がりに見える。この例は、新井氏が運営するWebサイト「錯視の科学館」(http://www4.ocn.ne.jp/~arai/Exhibition/illusiongallary4.html)から引用
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 新井氏は2001年ころから、目の錯覚、いわゆる錯視を数学的に解明する研究を続けている。もともとは純粋数学の研究者。視覚の研究を始めたきっかけは、錯視を数学的に解明しようとした文献を目にしたことだという。

 その文献では、フーリエ解析と呼ばれる手法で解明しようとしたが、うまくいかなかった。そこで、新井氏が専門としているウェーブレット解析という手法を使ってみたところ手応えを感じ、研究を開始した。

 その新井氏の目にとまったのが、当時ネットをにぎわせていた文字列傾斜錯視。「文字だけで構成した錯視は世界的に見ても珍しい」と興味を持った。

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