自炊といっても、もちろん炊飯器の話ではない。それは電子書籍の自炊、つまり自分で紙の本をバラバラにして、スキャナーで読み取り書籍を電子化することを意味している。

 自炊という言葉は、2ちゃんねる周辺で使われ出したようであるが、なんともはや、その響きが、その作業の寂しさと絶妙に絡まって、自前の電子書籍づくりには、この言葉を使いたくなる。

 本をバラバラにする行為が罪悪感を伴うからなのか、あるいは、音楽ファイルと同様に、なかなか電子化に踏み切れない出版業界や著作権者の恐怖を感じるからなのか、はたまた、自炊でできたPDFファイルを読むごとに、なんで最初からこの形式で買えないのかとバカバカしさを嘆きたくなるからなのか、理由はいろいろあると思う。けれど、その作業は、とにかく寂しくてやるせない。一緒に食べる相手もなく、男が自分で食べるためだけに、味なんかどうでもいいやと自炊する。そんな気持ちにさせる作業なのである。

 だから、自炊する人々は誰でもそう感じると思うのだが、なるべく自炊なんかしたくない。けれども自炊派は相当にいるらしく、amazonの「文房具・オフィス用品のベストセラー」の上位には、数百円の品々に並んで、実勢価格で3万円以上もするプラスの手動断裁機「PK-513L」が並んでいる。

 その断裁機を前にして並んでいる本の数々を見てほしい(写真1)。その姿はまるで、ギロチンの前に並ばされた囚人たちのようではないか。

写真1 プラス断裁機PK-513Lの前で恐怖におびえるかわいそうな本たち
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