「ノー残業、楽勝!予算達成しなくていいならね」、「残業時間削減、結局現場にムチャぶりですか」──。ソフトウエア会社のサイボウズが今年5月に打った広告には、こんな挑発的なキャッチコピーが並ぶ(写真1)。多くの会社が取り組み始めた「働き方改革」。しかし、実態は具体策を伴わない掛け声だけという場合も多い。サイボウズの青野慶久社長は、仕事の効率化を伴わなければ、優秀な人材は確実に離れていくと警鐘を鳴らす。

写真1 ■ サイボウズのグループウエア「キントーン」の広告。5月に東京都内で公開したところ、交流サイト(SNS)上で「気持ちを代弁してくれた」、「上司に言ってやりたい」といった声が上がった(写真:サイボウズ)
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「ノー残業」を押し付ける経営者に対して、多くの社員から広告のキャッチコピーに共感する声が上がっています。現場の本音をくみ取った文言を選んだのはなぜですか。

サイボウズ社長 青野 慶久氏
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 働き方改革の本質は、仕事の内容を見直して、無駄を取り除くことです。勤務時間を減らすことではないと言いたかった。

 ところが、社員が働く現場には「残業を減らせ」という指示だけが下りてしまっている。一昨年に電通の新入社員が過労自殺した一件で、経営者は長時間の残業を社員にさせると自分の首が飛ぶと気付いた。だから、夜は社員からパソコンを取り上げてでも仕事をさせまいとする。

 そうした働き方の「ルール」が先走っている状況ですが、クラウドなどITの「ツール」を使いこなせば楽に仕事を減らせますよ、と伝えるのが広告の狙いです。「上司に見せてやりたい」といった反響は、思っていた以上に大きかったですね。

今の働き方に不満を持っている若手社員は多そうですね。

 そういう人には、「さっさと転職しなさい」と言うようにしています。彼らが不満を持っているのに黙って会社に残るから、経営者もやり方を変えない。

 日本全体で働き手が減っていくので、これからは業界の枠を超えて人材を奪い合う時代です。どの会社もこぞって働き方の見直しを進めています。変わろうとしない限り、いい人を獲得できないどころか、今いる社員すら離れていくでしょう。

 私が知っている範囲でも、社員の働き方を見直した会社とそうでない会社とでは、既に人材採用の成否に差が生じている。経営者は覚悟を決めて改革に乗り出さないといけない時期に来ていると感じます。

働き方改革をしようにも、「何から始めていいか分からない」という声もあります。

 まずは今の仕事の内容を棚卸しして、やらなくてもいい業務を見つけることです。例えば、大手百貨店が最近になって正月の初売りをやめました。これまで毎年続けていたイベントだとしても、社員の負荷が大きいと分かれば、本当に必要かどうかを疑うべきです。

20年前に比べれば、ITの普及で仕事は効率化したはずです。なぜ長時間労働は改善しないのでしょう。

 ITの使い方が全く進化していないからだと思います。連絡方法は電子メールが主流だし、データはエクセルに記入する。20年前からあるものが、未だに使われています。