2016年10月17日(月)にTSUTAYA ROPPONGI TOKYOにて対談イベント「世界の事務所で味わう真剣勝負」を開催する。アラップ構造エンジニアの金田充弘氏と、吉村靖孝建築設計事務所の吉村靖孝氏を迎え、海外事務所の面白さや勤務時の苦労、最新プロジェクトなどを語ってもらう。イベントに先立ち、金田氏が見たレンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップ(RPBW)の仕事の進め方について2回にわたり紹介する。

 近年のインバウンド需要を追い風に、次々と商業施設の建て替えが進む東京・銀座――。数寄屋橋交差点の近くに立つ「メゾン・エルメス」はレンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップ(RPBW)が設計し、2001年にオープンした。地震時に“浮き上がる柱”の構造を持ち、洗練されたデザインのなかに日本の技術が宿る現代建築だ。

「メゾン・エルメス」の外観。設計時には、実寸大のモックアップでガラスキューブを通る光の印象などを確認したという(写真:寺尾 豊)
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東京・銀座の数寄屋橋交差点近くに立つメゾン・エルメスのビル(中央)。右はソニービル(写真:寺尾 豊)
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 構造設計を担当したArup Japanシニアアソシエイトの金田充弘氏は、「レンゾ・ピアノは初め、ガラスブロックをカーテンのように上から吊り下げたいと話していた。ベールに包まれたような透明な内部空間を求めていたので、それを実現するために必要かつ主張しないテクノロジーを考えた」と語る。

 ビルは地下3階、地上11階。柱を極力細く見せるため、地震力は店舗の背後の架構で受けるようにした。そうすることで、ビルは細長い敷地に合ったスレンダーな構造体となる。加えて、地震時に浮き上がる仕組みの柱とすることで、そうでない柱に比べると引張力を3分の1以下に抑えられ、550mm角まで柱を細くできた。

 「地震時に浮き上がる柱は、世界初の試みだった。だが、カリフォルニア大学バークレー校に通っていたとき、米・サンフランシスコにあるゴールデンゲートブリッジの橋脚を補強する実験をしていたので、浮き上がることで地震力を受け流すことはもともと頭にあった。メゾン・エルメスで突然思い出したのは、それほど追い込まれていたからかもしれない(笑)」と、金田氏は振り返る。