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ジン・コンサルティング 代表、生産技術コンサルタント西村 仁氏

 前回紹介した「固有技術」の中で、まずは材料の基礎知識からスタートしましょう。製品や、製品を造る生産設備や治工具に使われる材料に関する知識です。なぜ、材料知識を学ぶのでしょうか。製品開発者や生産技術者は、「どのように材料を選定するのか」を知らなければ、良い製品を造れません。資材購買や品質管理、営業などの間接部門の人は、「なぜこの材料が使われているのか」を知らないと、購買交渉やコスト削減の提案ができません。つまり、材料の知識がなければ、顧客の意図を十分に理解することも要求にきちんと応えることもできないのです。これが、材料知識を学ぶ理由となります。

 ところが、これほど大切な知識であるにもかかわらず、機械系出身の技術者でも難しく感じるのがこの材料の知識です。ましてや文系出身の社員にとっては大きな壁にも感じることでしょう。そこでまず材料の知識はなぜ難しいのかを整理しておきたいと思います。

 材料の知識が難しい第1の理由は、材料の種類が数百、数千種と膨大にあるからです。縄文時代といった大昔は、材料といえば石と木と土、縄といった身近にあるものだけでしたが、やがてある偶然から銅や鉄などの金属を発見し、近代に入ってアルミニウムやチタンなども取り出せるようになりました。さらに、これらの金属に他の成分を溶かし込むことで、強さや硬さが向上することを発見します。すると純金属に対して何を溶かし込むのか、またどれくらいの量を溶かし込むのかで、種類は飛躍的に増えていきました。

 そこで、JIS規格で種類を絞り込むと同時に、デファクトスタンダードによる市場原理で数はさらに絞り込まれました。しかし、それでもまだまだ多くの種類があります。そこで、企業は自社で「材料の標準化」を図り始めました。材料を選定するたびに毎回検討するのではなく、「この仕様のときにはこの材料を使う」と事前に決めておくのです。この材料の標準化は、とても大事な概念なのでこれからのコラムで紹介します。