イラスト:ニシハラダイタロウ
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 若いころ、私が提案した開発案件が上手くいかなかったら、一体、どうやって責任を取るのかと聞かれたことがある。

 最初は何を言われているのか分からなかったが、上から目線の物言いで、まるで私を部下のように扱う態度だったので、おそらく開発の責任は私にあり、上手くいかなかったらその責任は私にあると言いたいのだと理解した。そこで私は、「あなたはもちろん、私にも責任はありません。責任は、一切、社長にあるのです」と答えたのである。

 当然、今でもそれは正しいと思っているが、案外、ここのところを明確にしていない会社が多いのではなかろうか。

 それを、誰に聞かれたのか覚えていない。だが、 社長でないのは確かだ。なぜかというと、それまで社長にお会いしたこともなかったし、開発会議に出席されたこともなかったのである。

 いま考えると、そもそも社長が開発に無関心なのだから、そんな質問も出たわけで、そういう会社であったということだ。だから、それ以後、ご契約をいただくときには必ず社長と会うようにしているのである。

 会社の経営において、その責任者は誰か、それは、誰が考えても社長であることは明確なのに、開発となると不明になるのはいかがなものか。経営において、最も重要かつ優先すべき課題である開発という業務に、社長が直接関わらないのはどうしてだろうか。

 それは、その会社がメーカーならば製品の改良・改善を、流通小売業ならば販売促進や顧客開拓などの業務を開発と勘違いしているのかもしれない。

 開発とは、会社の屋台骨を支えるために必要な新事業や新商品を創造 (発明) することであり、会社の命運を定める、もっとも優先すべき重要な業務である。

 だから、会社の命運を一社員に賭けるはずはない。たまに、結果的に社員の発明が大ヒットして会社が大儲けをすることがあるが、このとき、その社員がいきなり社長になったという話は聞いたことがない。あったとしたら、それまでの社長はいてもいなくてもよい存在であったということだ。