この世は三次元で構成されている。一次元とは座標で表される長さだけの線で、二次元はその長さと幅の広がりである平面。そして、三次元はそこにもう一つの次元が加わって空間というのである。

 この一次、二次、三次といったものの見方は産業構造を表すことにも使われていて、一次産業とは農業・林業・水産業といった直接自然界に関わる産業のことを言い、二次産業とは鉱物や農林水産物を加工する工業であり、三次産業というのは商業・運輸通信業・サービス業で、一次、二次産業以外の産業であると定義されている。

 しかし私は、この三次産業の次にもう一つ、四次産業というのがあるのではないかと考えてきた。そしてそれが最近、にわかに顕在化してきたのである。

 四次元と言うと、あの有名なアインシュタインの特殊相対性理論のことを思い浮かべる人も多いのだろうが、そんな難解なことではなく、一次元はモノ、二次元はコト、三次元はコンテンツ(著作・デザインなど)、そして私が考える四次元というのは仮想現実(バーチャルリアリティー、VR)または人工現実感(アーティフィシャルリアリティ、AR)のことである。

 つまり、三次元までは実体的あるいは実際に存在するモノやコト・サービス、コンテンツなのだが、四次元は、実体や実際ではなく、空想あるいは仮想したものを実体的かつ現実のように見せることである。

 しかし、この四次元の世界、実際にはないことなのに、現実に存在しているかのように見せることで、これからやろうとしていることの将来や未来を体験させて、現実の世界に活かそうというのだから、ある意味でこれほど現実的なことはない。「スターウォーズ」という映画を見ると、ワープで飛行する宇宙船やへんてこな宇宙人が自動翻訳機を介して会話しているが、それはすべて空想・仮想の世界。でも観客は、そのうちにそれが現実になると誰もが思っているのである。

 私は、この四次元の世界を「想いや思索のデジタル化」、もっと言えば「理想のデジタル化」と定義している。コンピューターを用いて、想いや考え方の理想的な姿をデジタル化して見えるようにすることだと思うのである。

 これほど、コンピューターの演算速度が飛躍的に速くなり、ゲームソフトでは現実と空想の境目が分からないほどに高度化して行く時代。これからは四次元をどのように創るのか、それが四次産業ということなのだ。

本当の創造性を試されている

イラスト:ニシハラダイタロウ
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 したがって、開発も四次元化している。しかし、この四次元の世界で開発するには、今までとは全く違う取り組みが必要だ。

 まず、これまでは実体とか実際にあることを前提に開発してきたのであるが、四次元の開発は、その前提がないのであるから難しい。言いかたは悪いが、「絵空事(えそらごと)」や「戯言(たわごと)」ではないかと思われることを創るのであるから、創作人がよほどしっかりとしないと、疑われるだけで信用されないのである。(笑)

 しかし、漫画やアニメの世界を見れば分かる。最初、あまりにとっぴで驚いていた読者がそのうちに魅せられて、どんなにとっぴでも、どんなにあり得ないようなストーリーでも受け入れてしまうのを見れば、それと同じことなのだ。

 要するに、いかに現実と離れた空想力や想像力があるか、それがこれからの創造力ということである。それは、これまで現実から離れた開発をすると叱られていたのが、これからはどんなにかけ離れていようと、ただただ理想を追求すればいいのである。

 良い時代になったものだ。理想をデジタル化して、未来のあるべき姿、未来の理想像をいま現在つくることができるのである。

 そして、それが許される、いや奨励・賞賛される時代にあって、私たちは今、本当の創造性を試されているのである。

 ところで、私の創造性はどうかって? 心配無用。私は生まれながらの大言壮語。今では三味線と呼ばれるほど、言うことが現実離れしているのだ。

 えっ、それはただの嘘つきだって? う~ん、そういう言い方もあるなぁ…。(冷汗)

出典:日経テクノロジーオンライン 2016年12月9日公開
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