AI(人工知能)への注目が高まる一方で、「AIで何が実現できるのか」「導入にはどのくらいの時間やコストがかかるのか」といった疑問を抱く企業・組織も少なくない。AI活用に関する豊富な経験を持つ富士通は、こうした顧客の疑問に答えるため、様々な事業・業務ごとにAIの具体的な活用例を「活用シーン」としてまとめた。導入効果だけでなく、導入にかかる期間や費用の目安を示すことで、企業・組織の迅速な意思決定を支援する。

 企業のAI活用に関するニュースが連日のように報道されている。だが、その多くはPoC(実証実験)止まり。適用業務も、顧客応対など特定の分野に偏っており、実際の活用となるとそれほど広がってはいない。

 AI活用が広がらない原因の一つは、ユーザーである企業・組織が「どの業務にどのAI技術を活用したらよいのか」というイメージが抱きづらいことにある。AI技術の活用でどの程度の効果が得られるのかや、導入にかかる期間や費用がわかりづらいことも、企業・組織にAI活用をためらわせる。その結果、AI活用を見送るケースは少なくない。

 ある自治体もAIの活用を見送りかけた。この自治体では、地域内の外国人居住者の増加に伴って、外国人対応窓口業務の効率化が課題となっていた。窓口には「留学生はアルバイトできますか」「子どもを小学校に入学させるにはどうすればよいですか」といった、様々な問い合わせが寄せられるが、法令、マニュアルなどを参照しながら、適切に回答するのは簡単ではなかった。法令やマニュアルには普段は使わない専門用語も多く、単純なキーワード検索ではヒットしないからだ。さらに自治体の職員は数年で異動するのが通例なので、ベテランの知識を定着させ、問い合わせ内容を専門用語に置き換えるノウハウを組織として蓄積するには至らなかった。

 この自治体は、経験の少ない窓口担当者でもベテランと同様の対応を可能にしたいと考え、新たに窓口担当を支援するシステムを構築することを計画した。ベテランの問い合わせ履歴を基にAIを使って、住民からの問い合わせや申請の際に窓口の担当が適切な回答・処理を行えるように支援するシステムだ。

 ところが、この自治体では窓口でのやりとりの内容はほとんど記録が残っておらず、AIを活用する際に元となる学習用データが存在していないという課題を抱えていた。これではAI活用に必要なやりとりの履歴の収集から始めなければならず、システム構築にかなりの時間がかかる。仕方なく、この自治体もAI活用を見送って、一般的なマニュアル検索システムの採用に傾きかけていた。

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