クラウドや動画活用で顕在化する既存WANのトラブル

 拠点間を接続し、全社規模の通信基盤として重要な役割を果たしているWAN。しかし、最近では新たな問題が顕在化するようになってきた。その背景にあるのがクラウド活用の広がりと、企業が日常的に利用するアプリケーションの多様化だ。

 現在では多くの企業がMicrosoft Office 365のようなクラウドサービスを利用するようになっている。ここで大きな問題になっているのが、予想を超えたトラフィックの増大だ。メールボックスの同期やOfficeアプリケーションのアップデートなどに伴い、膨大な量の通信が集中的に発生するようになっているのである。多くの日本企業は、安全性を重視して社外のクラウドサービスに向かうトラフィックも、いったんWAN経由で本社やデータセンターに集約し、そこからインターネットに出すという方式を採っている。そのため、ほかの業務に必要な帯域が圧迫されやすい。もちろんWAN帯域を拡張するという解決策も考えられるが、これでは通信コストが増大してしまう。

 このような状況に陥るのはクラウドサービスの利用企業に限らない。既にWindows 10へと移行した企業であれば、頻繁に発生するWindows Updateのトラフィックにも悩まされているはずだ。Windows 7/8のメインストリームサポートが既に終了している現在、このような問題はすべての企業で発生すると考えられる。

 また、Web会議やビデオの利用が広がっていることもWAN帯域を圧迫する要因になっている。社外の情報を収集するために動画サイトにアクセスしたり、社員研修のe-ラーニングに動画を使ったりするケースも増えている。

 このような問題を解決できる手段として注目されているのが、SD-WAN(Software-Defined WAN:仮想化されたWAN)である。物理レイヤーの上に仮想化されたネットワークをオーバーレイすることで、通信先や利用アプリケーションごとに、異なる通信ルートやQoSを設定することが容易になるからだ。既に海外ではSD-WANの利用が広がっており、そのメリットを享受している企業も増えている。

 その一方で、注意点もある。海外発のSD-WANのほとんどが「インターネットの利用を前提にしている」ということである。

 日本企業では、これが導入のハードルになりやすい。日本におけるWANの多くは、通信キャリアが提供する閉域網を利用することで、高い通信品質とセキュリティを確保している。これをインターネットベースに置き換えてしまうことに、抵抗を感じる経営者やユーザーは少なくない。また、SD-WANの効果を見極める前に新たなコスト負担に抵抗を感じる企業もあるだろう。

 ただし、最近ではこうした課題を払拭するための新しいサービスも登場している。インターネットを経由せず、しかもエントリータイプのVPNサービスを利用している企業であれば、月額数千円の追加でSD-WANを利用可能だという。次ページでは新サービスの具体的な仕組みやメリットなどについて紹介したい。

次ページ以降は日経 xTECH Active会員(無料)の方のみお読みいただけます。