毎秒100ギガビット無線伝送を、世界で初めて新原理(OAM多重)を用いて成功

〜5Gの次世代を実現する革新的無線通信技術を開拓〜

 

 日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦博夫、以下 NTT)は、2030年代の無線需要を支えるテラビット級無線伝送の実現を目指し、OAM多重という新原理を用いて毎秒100ギガビットの無線伝送に世界で初めて成功しました。

 OAM(Orbital Angular Momentum:軌道角運動量)を利用した新原理により作りだされる電波にデータ信号を乗せ、広く利用されているMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術を組み合わせ処理するNTT考案の方式により、飛躍的に大容量化を実現できることを実験室の環境で確認しました。今回の実験は、この原理がLTEやWi-Fiのおよそ100倍、また、現在予定されている5Gの5倍、という大容量の無線伝送に適用できる可能性を示しており、コネクテッドカーやVR/AR(仮想現実/拡張現実)、高精細映像伝送、遠隔医療等が普及する5Gの次世代を実現する革新的無線通信技術に貢献するものです。

 今回の成果を、5月23日から25日に開催されるワイヤレステクノロジーパーク2018(WTP2018)にて展示発表するとともに、6月3日から6日に開催される米国IEEEが主催する国際会議2018 IEEE 87th Vehicular Technology Conference:VTC2018-Springにて発表する予定です。

【動画】 https://www.youtube.com/watch?v=O4TtbnpHKdA

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■研究の背景

 引き続き増大する将来の無線通信需要に備え、NTTではテラビット級無線伝送の実現を目標に研究開発に取り組んでいます。無線通信の容量を増大するには、空間多重(※1)数の増加、伝送帯域幅の拡大、変調多値数の増加の3つの方向性があります(図1)。これらの内、NTTは(準)ミリ波帯(※2)を用い伝送帯域幅を拡大するとともに、軌道角運動量を持つ電波による新しい原理により空間多重数を増加するアプローチを追求しています。

 軌道角運動量(OAM:Orbital Angular Momentum)(※3)は、量子力学において電波の性質を表す物理量の一つです。異なるOAMを持つ電波は重ね合わせても分離することができる特徴(OAM多重の原理)があり、この特徴を利用した伝送技術がOAM多重伝送技術です(図2)。電波のOAMに関する研究は20世紀初頭に遡り、1980年代頃からVHF帯・UHF帯で、大容量伝送技術が成熟した2010年代以降は、ミリ波帯等において、OAM多重伝送が研究されてきています。近年の結果としては、アメリカの南カリフォルニア大学により、2014年に28GHz帯で、2016年に60GHz帯を用いて32Gbpsの伝送が報告されています。

■研究の成果

 OAMとは、電波の進行方向の垂直平面上で位相が回転するように表される電波の性質の一つで、この位相の回転数をOAMモードと呼びます。OAMの性質を持つ電波は、同一位相の軌跡が進行方向に対して螺旋形状になります(図2)。OAMの性質を持つ電波は、送信時と同じ位相の回転数を持った受信機でないと受信できません(例えばボルトとナットの関係のように螺旋構造の合ったもの同士でないと通過できません)。そこで、異なるOAMモードを持つ複数の電波を重ね合わせても、それぞれのOAMモードに合った位相の回転数で受信できる受信機を用意すれば、互いに干渉することなく分離することができます。この特徴を利用し、複数の異なるデータを伝送する技術をOAM多重伝送技術と呼びます。

 NTTは、OAM多重伝送に、現在広く利用されているMIMO(※4)技術を統合したOAM−MIMO多重伝送技術を考案しました。MIMO技術を巧みに統合することによって、異なるOAMモード間で互いに干渉しない性質を維持しつつ、複数セットのOAM多重伝送を同時に行うことが可能となり、従来を凌駕する多重伝送が実現できます。この技術を用いた無線伝送を行える28GHz帯で動作する送受信装置を試作し、実験室において10mの距離で伝送実験を実施しました。OAM多重される複数の電波にデータ信号を乗せ、原理通り無線伝送が可能であることを確認しました。さらに、7.2から10.8Gbpsのデータ信号11本を同時に処理できる信号処理技術を実現し、合計100Gbpsの大容量無線伝送に世界で初めて成功しました。

 *以下は添付リリースを参照

 

 

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添付リリース

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0479729_01.pdf