店舗で得られたデータを店舗運営施策につなげるアパレル企業も既にある。ワコールホールディングス傘下の下着メーカー、ピーチ・ジョンは、いち早く店舗の顧客分析に着手した企業の1社だ。「この商品は絶対売れると思っていた商品が売れないなど、感覚頼みの店舗運営の限界がきていた」(ピーチ・ジョン カスタマーデライト向上インフラ推進部の宮澤雅行氏)。

 アパレル業界は商品数が多いだけでなく、シーズンごとに商品の入れ替えが激しい。例えばピーチ・ジョンの場合、1シーズンにブラジャーだけで商品数は最大60型に上る。サイズや色違いも合わせると1シーズンで約2500種類の商品が入れ替わる。POSデータを使えば商品別の売れ行きはわかる。一方で、なぜ購入されなかったのかを分析するのは難しかった。

 それを可能にしたのが米リテールネクストの店舗解析ツールだ。ピーチジョンは2016年8月から、新宿3丁目店とルミネ2新宿店に導入。店内に複数台のカメラを設営し、顧客の動線を分析する。店の前の通行人数と入店客数をカメラで把握し、入店率と購買率を割り出す。既に従業員のシフト調整で効果を上げている。その結果、時間帯によっては購買率が「如実に上がっている」(宮澤氏)という。

 国内でリテールネクストと同様のシステムを提供するのが、AIベンチャーのABEJA(アベジャ、東京・港)だ。商業施設を展開するパルコが活用する。11月4日に開業した東京・上野のパルコの新業態「パルコヤ」で全テナントの約9割にあたる60店に、計230個のカメラを設置。各テナントが入店率や購買率を把握できるようにした。商業施設側のパルコにもメリットが大きい。施設全体の入店客やテナント同士の誘客率などを把握できるためだ。

アベジャの店舗解析ツール。店舗にカメラを設置し、入店率や購買率を分析
出所:ABEJA
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 「Aに来店する顧客層は、Bにも入店する傾向がある」といった事実を把握できれば、マーケティング効率が上がる。個人情報の観点から現在は難しいが、顧客の顔を特定し、行動履歴を分析することで、買い物の利便性向上に役立てることも可能になるはずだ。

AIと顔認証技術を使い、入店客の属性を判別する
出所:ABEJA
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