「スマート工場」「インダストリー4.0」といったブームに乗り、自動化工場の中核システムである「生産スケジューラ」が脚光を浴びている。だが生産スケジューラは、想定以上に導入が難しいシステム。使いこなすには、生産体制の見直しを含めた長期の取り組みが求められる。

 最近の人工知能(AI)ブームに乗って、業務上の課題に対する最適解をコンピュータが自動で導いてくれる、と楽観的に考える人が目立つ。

 製造業の業務管理領域で、人間に代わってコンピュータが解を導く自動計算システムとして期待されているシステムに生産スケジューラ(生産スケジューリングシステム)がある。

 生産スケジューラとは、コンピュータが生産計画を自動的に作成する情報システムのことを指す。在庫管理や品質管理を含めた生産管理システムの一部として導入することも多い。

 近年、「スマート工場」「インダストリー4.0」といったブームに乗って、ロボットや自動搬送などを主体とする自動化工場がもてはやされるようになった。自動化工場の生産計画を司る中核システムとして、生産スケジューラも脚光を浴びている。

 だが、生産スケジューラの導入は情報システムの中でも難易度が高く、たびたびトラブルを起こしている。

 工場に生産スケジューラを導入したのはいいが、ITベンダーの宣伝文句のように有効に活用されることなく埃を被ってしまったという事例をよく目にする。

 生産スケジューラの導入は投資額が比較的少ないこともあり、本社の情報システム部門が知らない間に工場が単独で導入するケースが多い。このため、基幹システムの入れ替えに伴うトラブルのような全社的な問題にはなりにくい。トラブル事例がメディアで取りあげられることも少ないので、導入の難しさはあまり知られていない。

 だが、海外との競争がますます激しくなる日本の製造業にとって、生産性の向上や納期の短縮につながる生産スケジューラの使いこなしが重要になるのは間違いない。現場の生産拠点も、本社の情報システム部門も、生産スケジューラを使いこなす術を身につける必要がある。

 今回は、生産スケジューラの利用がうまく進まずにいた製造業者A社について、どのような経緯で有効なシステムに仕上げたかを紹介する。

図 金属製品メーカーが陥ったシステム開発トラブル
生産スケジューラ導入で生産が混乱した
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導入したら納期が長く

 A社は受注生産を主体とする金属製品メーカーである。複数の加工工程を経て製品を生産する。

 同社の生産管理システムは国産のMRP(資材所要量計画)/生産管理パッケージをカスタマイズしたもので、開発作業は自社の要員が担った。

 前回の連載でも紹介したように、見込み生産を前提とするMRPのロジックは、取引先から発注を受けて生産を始める受注生産には適合しにくく、A社のような受注生産企業がそのまま使うのは難しい。実際、A社が使っていたMRP/生産管理パッケージは生産計画の精度が粗すぎた。

 このため生産計画機能は有効に使われておらず、作業指示書の発行、生産実績管理が中心だった。

 A社が新たに生産スケジューラの導入を考え始めたきっかけは、営業部門から製造部門に寄せられたクレームだった。製造部門は納期遅れを防ぐため、取引先の問い合わせに対して回答する納期を長めに設定していた。だが、納期が長いと失注しやすくなるとして、営業部門が改善を要求してきたのだ。

 そこでA社は、詳細な計画を策定できる生産スケジューラを導入することで、納期(リードタイム)を短縮することを企画した。

 A社は複数の生産スケジューラの代理店に声をかけ、機能を比較した。最終的に導入を決めた生産スケジューラは導入実績が豊富で、自動スケジューリングだけではなく手動でのスケジュール調整も可能なシステムだった。A社だけでは生産スケジューラの機能を十分に理解することができないと考え、業務知識があると思われる代理店を選択し、導入のサポートを依頼した。導入自体は比較的スムーズに完了した。

 だが、導入した生産スケジューラを使ってみたものの、期待されたような納期の短縮は実現できなかった。むしろ以前よりも納期が長くなるケースが頻発したり、欠品が増えたりした。

 何とかならないかと代理店に相談すると、「問題は生産スケジューラではなくA社の業務にあるので、手の打ちようがない」という回答であった。

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